第379話
魔力が俺の中に入り込み自分の魔力総量が増えていくのがわかる。
最初は魔力酔いと言ったらいいのか多少の体調不良があったが何度か試したので今は問題ない。
外からの魔力を身体の中に余す事なく取り込んで自分の魔力とするために、針で腕に直接注入という少しの痛みを伴う事になってしまったが急拵えだったのでしょうがない。
これは後で検討するとしよう。
俺は魔力総量が増えた事により今まで使う事が出来なかったエンチャントを使用する。
『エンチャント:神風』
俺の身体を中心に風が舞う。
脚に力を入れて前方に駆け出す。
エンチャント:活水を使うために空けていたサントバルとの距離が数歩で消え去る。
「は?」
サントバルの間抜けな声も置き去って一瞬でサントバルの背後に位置取る。
俺はそのままの勢いで剣をサントバルに叩きつける。
火属性のエンチャントは使っていないが、速さがのった一撃だ。
サントバルは剣を受けてその場から吹っ飛んだ。
森の木々を破壊しながらサントバルが飛ばされる。
大きな木に当たりそのまま下に落ちた。
サントバルはその場で起き上がり俺を探す。
「な、なんだその速さは!?視界に捉えられないだと!?」
サントバルが喋る度に鎧の口元が開く。
見た目が気持ち悪いから、出来れば喋らないでもらいたいところだな。
魔道具に貯めておける魔力はまだまだ余裕がかなりある。
第3段階のエンチャントはかなりの魔力を使うと思っていたので俺の総魔力を数人分くらい片方の魔道具に貯めている。
これならまだまだ魔力切れの心配はないな。
「き、きさま!何をした!」
サントバルの声に焦りが混じる。
ダメージはなさそうだが‥
「さてな。お前に奥の手があったように俺にもあったって事だ。さて好き勝手やってくれたが、こっからは俺の番だな。」
しかしさっきの攻撃でダメージを与えられていないとなるとやっかいだな。
エンチャント:神風じゃないと近寄れない。
しかしダメージを与えるためには火属性のエンチャントを使うしかない。
それなら‥
俺は『スペース』から木偶人形を2体出す。
「行け。」
この木偶人形2体は簡単な指示しか通じないようにしている。
張り付いて爆発。
それだけの指示だ。
俺の可愛い木偶人形たちをこんな事に使うのは不本意だが、サントバルを倒すためには必要だ。
後でちゃんと埋葬してやるからな‥
木偶人形たちはサントバルに向かって動き出す。
それを見届けて、俺は次なるエンチャントを発動させる。
『エンチャント:獄炎』
エンチャントを発動させると全身に炎が走り回る。
熱を持ち腕が、脚が力を発している。
恐ろしい程の膂力を抑えながらその時を待つ。
サントバルの元にたどり着いた木偶人形たちは前後を挟んで隙を窺っている。
「ちっ!こんな物俺に通じるわけがなかろうが!」
サントバルは前方に駆け出し、前にいる木偶人形を縦に斬り裂く。
その隙に後ろにいた木偶人形がサントバルに迫るが、サントバルは振り向き様に木偶人形を攻撃する。
木偶人形は身体を斬られながらも剣にしがみつき、その場で爆発した。
轟音と共にあたりに煙が立ち込める。
「くそっ!こんな仕掛けがあるとは!しかしこんな物では俺にダメージは与えられんぞ!」
煙が薄くなりサントバルは俺の姿を探す。
しかし俺の姿は元いた場所にはいない。
一瞬暗くなった視界にサントバルの背中が映る。
俺は眼前にあるサントバルの身体にエンチャント:獄炎の力で剣を撃ち込む。
寸前で気付いたサントバルは剣と腕をクロスして防御を行う。
ふん。
その程度で受け切れると思うなよ!
俺は更に剣に力を込める。
剣が折れる甲高い音が響く。
俺の剣はサントバルの剣と身体を守っていた両手をそのまま斬り裂いた‥
「なぜお前が後ろにいる!走り寄った気配はなかった!まるで急に後ろに現れ‥」
サントバルは驚愕の表情を浮かべる。
また兜の口が開いて驚いてるのが見えたんだが、相変わらず気持ち悪い。
ねちゃっとしている。
「ま、まさかお前は空間を超えたと言うのか!?」
正解。
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