第369話
地竜はほとんど戦闘不能に近い状態だ。
そう思いアキーエとミミウは次の多頭竜に向かおうとした。
しかし地竜もドラゴンとしての矜持があるのだろう。
地竜がアキーエを噛み砕こうと襲う。
しかし地竜の動きを見逃さなかったミミウが盾を使い地竜の攻撃をいなした。
「ありがとうミミウ。助かったわ。」
「地竜さんはミミウが相手するですぅ。アキーエさんは頭がいっぱいあるドラゴンさんをお願いするですぅ。」
「わかったわ。気をつけてね。」
「任せてください〜。地竜さんが1番美味しそうだから楽しみですぅ。多頭竜さんも美味しそうだから、地竜さんを倒したらすぐにそっちに向かうですぅ。」
「そ、そう。頼んだわね。」
ドラゴンって食べれるのかしら?
まあクラーケンも食べれたんだから、ドラゴンも食べれるのかも‥
でも地竜が1番美味しそうって感覚はよくわからないわね‥
相変わらず侮れないわ‥
そんな事を思いながらアキーエは多頭竜に向かい駆け出した。
アキーエは多頭竜の前までくると、その大きさに圧倒された。
(流石に大き過ぎね。まあ森の木々から頭が出るくらいだから大きいって事はわかってたんだけど‥)
アキーエのサイズからすると多頭竜の頭にはとても攻撃が入りそうにない。
多頭竜の頭を下げさせるか、こちらが頭の位置まで移動するか。
多頭竜はこちらを見ながらゆっくりと進んできた。
アキーエは素早く近づくと爆殺拳を放った。
多頭竜の外皮には他の竜と違って鱗がない。
そのため攻撃が通ると思ったが、結果は表皮を少し焦がした程度だった。
(魔法が効かない?火属性だけかしら?どちらにしろ普通の攻撃ではダメージが入らないって事ね。)
多頭竜は特に気にも留めず、そのまま歩を進めようとしている。
その隙にアキーエは気を練って胴体に対して攻撃を放つ。
「魔気一閃!」
アキーエの放った気と魔力の融合された力が多頭竜に放たれた。
しかし多頭竜の身体に入るとすぐに爆発する。
しかもいつもより衝撃が小さい。
(筋肉の密度の問題?気と魔力が身体の中まで通らなかった。これじゃあ表面にしかダメージが与えられない?)
多頭竜はダメージを受けた事によりアキーエを敵と認識したようだ。
そのアキーエに向かいブレスを放つ。
アキーエはブレスの範囲外に素早く離脱する。
ブレスのかかった場所はその一帯の草木が溶け出していた。
(酸のブレス?)
多頭竜は属性竜とは違い、様々な攻撃手段を持っている。
毒のブレスを吐く竜も発見された事があるそうだ。
その時発見された竜については遠距離攻撃が出来る多数の高ランク冒険者たちによって討伐された。
それでもかなりの被害が出たらしい。
アキーエは遠距離での攻撃方法があるが、この多頭竜とは相性が悪い。
先程の火属性の攻撃では表皮を少し焦げさせる程度であった。
遠距離からの攻撃だったとしてもあまり変わりはないだろう。
(直接頭を叩くか、心臓近くに『魔気一閃』を放つしかないわね。)
マルコイの作った羽根人形なら頭の近くまで行けるかもしれない。
だが扱い慣れてない物で動けば、空中で攻撃を受けてしまうだろう。
アキーエは多頭竜を見上げる。
すると矮小な物と思っているのか多頭竜が笑ったかのように見えた。
(むっ!)
その顔を見てアキーエは覚悟を決めた。
多少痛い思いをする事になるだろうが、これ以上このドラゴンを先に進ませるわけにはいかない。
そう思いアキーエはその場に屈み込む。
そして‥
「頭の位置が遠いなら!わたしが近づけばいいんでしょっ!」
その場で両手に魔力を込める。
そして同時に手を保護するために気を纏わせる。
「弾けよ!灼熱の爆炎!」
その場で魔法を放ち、その衝撃でアキーエの身体は宙に舞った。
そして左のガントレットから魔法を放ち、方向を修正する。
そして右のガントレットにいつもの数倍の魔力を溜める。
「表皮が硬いなら、それごと吹っ飛ばせばいいんでしょっ!」
眩い閃光と共に爆音が響き渡った。
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