第368話

アレカンドロは宙を駆ける。

以前のように鈍重な鎧ではないにしろ、フルアーマーで空を駆けるなんて夢にも思っていなかった。


背中には2対の羽根がある。

実際その翼をはためかせて飛んでいるわけではない。

翼にある何らかの動力で浮く事ができているんだと思う。

もしかしたらマルコイ殿が作っていた羽根人形と同じ原理なのかもしれない。


しかし今はそんな事はどうでもいい。

空を駆ける事ができる。

それがわかっていればそれでいい。


マルコイ殿の仲間になっていきなりこんな戦いがあるとは思わなかった。

マルコイ殿はいつも戦いの中に身を置いている。

だから自分も近くにいれば少しは強くなれるんじゃないかと思った。


だが実際は違った。

仲間になった自分にいきなり強大な力を渡してくれたのだ。

もちろんその力に驕ることなく強くなるために努力をしなければならない。

アキーエさんやミミウさん、マルコイ殿に比べたら自分はまだ全然弱い。


しかし少しは‥少しくらいは強くなれたのかもしれない。

今までだったら恐れて足も動かなかったと思われる氷竜にさえ立ち向かって行くことができている。

しかも今の自分なら勝てる。

そう思う事が出来ている。

まだまだ未熟だが、自分の憧れの人に少しでも近づくために氷竜を倒してみせる!


氷竜は近づく自分にブレスを放ってきた。

多分殆どの種族は一瞬で凍ってしまう。

しかし鎧は、自分を包む鎧がこのまま突っ込めと言ってくれている。


ブレスの中に入る。

視界が一瞬で白くなる。

そのままブレスを突っ切り氷竜の顔の真横に出る。


多少の寒さは感じたが、凍った様子はない。

顔は腕で防御はしていたが、特に視界に影響はないようだ。

これも鎧の効果だろうか?


氷竜もまさか自分と同じ目線に人が来るとは思っていなかったのだろう。

明らかに狼狽した様子だ。


そこに手に持っている大斧に力を込めて殴り倒す!


大斧はまるで風を操っているかのように軽く、そして暴力的な力を発揮した。


まるで風に押されているかのような自分の力以上の威力があった。


氷竜の鱗は硬く、一撃で首を斬るような事はできなかったが浅くない傷をつける事ができた‥


すごい。

この力が有ればマルコイ殿たちの力になれるはず。


そう思いながらアレカンドロは氷竜に追撃をかけるべく空を駆けた。







おお!

アレカンドロも気合入ってるなぁ。

最初は新しいスキル【聖鎧闘士】に振り回されていたけど、少しずつ扱えるようになってきたからな。


しかしフルアーマーで飛べて早いとかどこの悪夢よ。


あんな鎧姿の人が飛んできたら普通逃げるわな。


だが相手はドラゴンだし、多分自分が最強なんて思ってるだろうから逃げないんだろうけど。


アレカンドロのスキル【聖鎧闘士】にはどうやら風の力が備わっているようだ。


多分氷竜のブレスも風を纏って冷気を通さないと思う。


それを意識して使うといいんだろうけど、アレカンドロは感覚で使ってるようだ。


いろいろ説明しようかなと思ったけど、自分のやりたいようにしてもらった方がアレカンドロについてはいいような気がする。


おあっ!

ブレスに突っ込んだ!


ふぅ。

やはり無事ではあったが心臓に悪いな。

自分のスキルならいけると思ったんだろう。


大斧にも風を纏わせて軽量と威力を上げている。


硬い氷竜の首をかなり深く斬り裂いたみたいだな。

氷竜もこちらが小さな生き物と思って油断していたところがあるんだろう。


まさか自分が傷つけられるとは思っていなかったようだ。


これから本気でくると思うが、今の傷のおかげでかなり優位に立てると思う。


アレカンドロは心配はいならないようだな。


さて、後は俺の相手だな。

多頭竜とサントバルとの戦いになるようだ。


あれ?

多頭竜がアキーエたちの方に行ってるんだけど‥


あれじゃ地竜、多頭竜対アキーエ、ミミウとの戦いになりそうだ。


あれ?

お、おれの出番はまだ先なのか‥?

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