第363話

依頼当日の日。

俺たちはパーティ全員で『アウローラ』の拠点に向かった。


バラバラで行くと途中で襲われた時に『アウローラ』を守れないからな。


街は変わらず賑わっている。

セイルズはこの騒動が終われば離れる街だ。

しかし自分たちが考えて販売したおもちゃや楽器が街に溢れているのを見ると感慨深い。


フーラさんの店の前を通る。


『あのマルコイ神様も認めた!たっぷりタルタル丼!』


と書いてある。


俺は食べただけだ。

決して認めてはいない。

この街を離れる時は必ずあの看板だけは訂正させねばなるまい‥




『アウローラ』の拠点に着くと、団員が拠点の前に集合していた。


「マルコイさん。待ってたぜ。」


団長のクワイスがそう言いながらこちらに向かってくる。


「すまないなクワイス。遅れたか?」


「いや、こちらも今準備が終えたところだ。」


団員は全部で20名程度だろうか。

その中には先日団長室にいたメンセンもいる。

光が眩しい。

セイウットにいる俺の認める勇者は元気だろうか‥


「新しく入った団員は経験不足もあるから、今回は拠点に待機してもらっている。まあマルコイさん達がいるから正直俺達は同行するだけになるかもしれないけどな。」


「そんな事はないよ。何があるかわからないしな。おそらくないとは思うけど、本当にモンスター討伐かもしれないし。」


おそらくというよりも100%ないと思っている。

もうナイコビ商会も『カッカス』も進退窮まりない所まで来てるはずだからな。


「それにアレカンドロも来てくれているしな。」


クワイスは先日団から抜けたアレカンドロに目を向ける。


「それはそうとアレカンドロはなんで鎧を着てないんだ?それにいつも持っている大斧も。まさかとは思うが今日は見学とかじゃないよな?」


今日のアレカンドロはいつものフルアーマーじゃなく軽装な出立だ。

動きやすい格好ではあるが、今から戦いに行くような姿には見えない。


「自分はこのままで大丈夫です!そしてもちろん戦闘にも参加します!」


するとクワイスはこちらを見る。


「もしかしてもうアレカンドロになにかした?まあアレカンドロはもう非常識なマルコイさんの仲間になったんだ。何があっても驚かないけどな。」


誰が非常識だ失礼な。

げふんげふん。


でも今まで一緒に戦ってきた人がいきなり違うスキルを使ってフル装備したら流石に怪しいか。

まあその時は鎧なんかは俺の時空魔法で収納してたって事にしとくかな。


「マルコイさん達も準備はいいかい?」


「ああ。こちらはいつでも大丈夫だ。今日は何があるかわからないからな。本当にヤバいと思ったら俺たちの事は心配せずに遠慮なく撤退してくれよ。」


「わかってる。下手にその場に残ってマルコイさん達の足を引っ張るような真似だけはしないようにするよ。」


こっちの本音を気づいてくれていたか。

相手も準備をしている事だろう。

もちろん『アウローラ』の人たちがいた方が相手が多数いた時は助かる。

しかしもし予想外の事が起きた時は『アウローラ』の人たちを護りながら戦うのは困難だ。

それだったら早く撤退してもらった方がいい。


クワイスはこちらを見た後に団員たちに目を向ける。


「みんな準備はいいか?今日は『カッカス』との最終決戦になるかもしれない。心してかかれよ。だか危ないと思ったら遠慮なく逃げろ!心配しなくても俺達にはマルコイさんがついてる。彼なら全てを任せられる。」


団員がこちらを見る。

その全ての視線に畏敬の念を感じる。

今日の作戦に参加する団員は全てこの間のオーク戦の生き残りだ。

俺が間近で戦っているのを見てた人たちだからな。


「今クワイスが言った通り俺たちが『カッカス』をぶっ潰す。皆はその手伝いを頼む。」


皆が一様に頷く。


「それじゃあ行くぞ!傭兵団『アウローラ』!出立だ!」


よし!

それじゃあアキーエと愉快な仲間たちも出発するぞ!

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