第357話

依頼を受けて詳細な話をした後に帰ろうとすると、アレカンドロが少し残ると言い出した。


「そんなに時間がかからないなら待つぞ?」


「いや大丈夫です!ちょっと長くなるかもしれないのでマルコイ殿たちはお戻りください!」


アレカンドロは最近元気がなかったから気になっていたんだが‥


自分の所属している傭兵団で話をして少しでも元気になるといいけど‥


「わかった。少し街に寄るかもしれないけど、遅くはならないと思うから。それじゃあ先に戻っておくな。」


「はいっ!承知しました!」


うん?

何か少し緊張してるのか?


気になりつつも団長室を後にする事にした。


するとアキーエがアレカンドロに話しかける。


「ちゃんと自分の気持ちを言うのよ。頑張ってね。」


するとアレカンドロは顔を真っ赤にする。


「アキーエ殿‥ありがとうございます!自分‥頑張ってみます!」


これってアキーエに聞いても教えてくれないやつだよな?

まあそのうちアレカンドロが話に来るといっていたから気長に待つか。




拠点に戻る前にどうしても気になってしまった店に寄る事にした。


街では外で『商人大脱出』や『ジェンガ』を楽しそうにしている子供たちがいた。


昼間っから酒を飲みながら楽器を楽しむ大人がいた。


自分たちが広めたものだが、楽しんでいる人たちの笑顔を見るとこっちも嬉しくなるな。



しかし‥



ここだよ‥




『オススメ!たっぷりタルタル丼』


確かに海鮮丼やら何やらを提案した。

でもその中にタルタルなどと言うメニューを提案した覚えはない。


あるとしたら‥

タルタルソースだけだ。


そしてこの店はフライを提案したフーラさんの店だ‥


悪い予感しかしない‥


店に入るとすぐにフーラさんが気づいて走り寄ってきた。


「キリーエさん、マルコイ神様。今日はわざわざどうされました?」


うむ。

俺の敬称が神様なのが非常に気になる‥


それに以前会った時よりもマッチョになってないか?

おっとりとした綺麗な感じだったのにマッチョで厳ついお姉さんになった。

外見って大事なんだね。


「フーラさん、何かこう‥勇ましくなりました‥?」


「あらっ!そう見えます?少し気になってはいたんですけど‥」


腕を曲げるとムキってしてる。


「そ、それはそうと店の前にあった『たっぷりタルタル丼』って何ですか?」


頼むから、フライにたっぷりとタルタルソースであってください。


「あ!あれ見て来られました?いや〜、マルコイ神様に教えていただいたタルタルソースなんですけど、フライにつけていたらもっとかけて欲しいって人が多くて。それで思い切ってご飯にタルタルソースだけかけたらどうなるかと思ったら意外とお客さんが食いついちゃいました。値段も格安で提供してるので今ではうちの看板商品です!」


いや‥

斜め上どころじゃなかった‥

遥か上空を飛んでました‥


「それでタルタルソースに使うマヨネーズを作り過ぎて少し筋肉がついちゃいました。」


いや、少しなんてレベルじゃないんですけど!

外見変わってるんですけど!


うむ。

食べてみるのは怖いので、このまま帰ると‥


「じゃあ、『たっぷりタルタル丼』を5人前くださいですぅ!」


うん。

ミミウさんの事忘れてました。

クワイスと話をしていた時はウトウトしてましたけど、今は生き生きしてますね。


「はい!すぐにお持ちいたしますね!」


そう言ってフーラさんは厨房に戻っていった。


しばらくしてフーラさんと店員さんが沢山の丼を持ってやってきた。


見ると丼にはなみなみとタルタルソースがのっている。

そう。

ご飯とタルタルソースのみである。


「いただきますぅ!」


ミミウがすごい勢いで食べ始めた。


「うん。この酸味と玉ねぎのシャキシャキ感がたまらないですぅ!タルタルソースはご飯にも合うですぅ!」


いやミミウさん‥



その後、更におかわりをするミミウのため、マルコイはマヨネーズ作りに駆り出されるのだった‥

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