第356話

俺たちは『アウローラ』の拠点に向かっていた。


クワイスから気になる依頼が入ったので来て欲しいと言う事だった。


受ける前に俺の意見を聞きたいとの事だった。

おそらく『カッカス』絡みだろう。


どんな悪あがきを見せてくれるかしらないが、ちゃんと潰してやらないとね。

魔族の暗殺者とサントバルたちが最初の時点で一緒に襲撃してきたら多分負けてたと思う。


だからしっかり準備して少しずつ相手の戦力を減らせたのはよかった。

まあアキーエには準備に力入れすぎと言われたけど‥


確かに若干作るのが楽しくなってしまったのは事実である‥



セイルズもキリーエが商人魂全開で動き、食事処のほとんどをホット商会の加盟店にしていた。


最初に数件売り上げが悪い店に加入をすすめてメニューの改善やお店の内外装を整えていった。

すると瞬く間に繁盛店になり、様子見していた他の店もこぞって加盟していった。


ちゃんと売り物のすみわけも行い各店舗に目玉となる商品を作った。


街の中だけで結構なお店があったが、地域ごとに分けて今まで作ってきたメニューのアレンジや新商品を提案した。


多少提案する量が多かったが、俺には【異世界の知識】で得られる膨大な料理の知識があるから問題ない。


勇者たちの誰かの知識だとは思うが、料理やらお菓子やら作るのが趣味だったやつがいるのだろう。


多分恵だとは思うけど。

あやめだったら想像している人となりと違うのでかなり驚きます‥




『アウローラ』に向かう途中で『たっぷりタルタル丼』とかこちらの想像の斜め上を爆走しているメニューもあったが、今はそっとしておく。

帰りに見に行ってみるけど‥



『アウローラ』の拠点に着いた。

話は通ってるみたいで、すぐに団長室に案内される。


扉をノックするとクワイスの声が聞こえる。


「どうぞ、入ってくれ。」


中に入るとクワイスとツルツルメンセンがいた。


「わざわざすまないなマルコイさん。本当なら俺から会いに行かないといけなかったんだが‥」


「構わないよ。まだ『アウローラ』も完全に立ち直ったわけではないんだろう?」


「そう言ってくれると助かる。それで本題なんだが‥」


クワイスは一枚の依頼用紙を取り出した。


「俺たち『アウローラ』は少しずつ依頼に取り掛かり出した。『カッカス』はマルコイさんのおかげで身動きがとれないでいたからな。そっちは無視できたから立て直しを重点的にさせてもらった。スカウトなんかで団員数も増えてきたんで、モンスター退治を主に受けるようにしていたんだ。そしたら先日こんな依頼が舞い込んできた。」


俺はクワイスが差し出した依頼書を確認する。


そこには簡潔に依頼内容が書かれていた。


『ナーメルとセイルズ間にある森にモンスターの大量発生の兆しあり。1箇所の傭兵団では手に余るため『カッカス』と共同で退治をお願いしたい。 ナイコビ商会 会長サントバル』


俺は読み終えた後にクワイスを見る。


「まあ読んでもらったら分かると思うが、おそらくナイコビ商会側は決着をつけたいようだ。風の噂だがナイコビ商会のあるナーメルは人口がどんどん減っている。これもマルコイさん達の仕業なんだろ?あいつらもうケツに火がついて燃えまくってるみたいだ。」


まあかなり頑張ったからな。

動かないならケツどころか全身燃えまくるまでやってやるつもりだったし。


「そうか。ならその依頼は俺たちで受けよう。」


まだ奥の手があるかもしれないけど、俺たちとナイコビ商会の戦いに『アウローラ』を巻き込むわけにはいかない。


「マルコイさんならそう言うと思ったよ。でも今回の依頼は俺たち『アウローラ』にも協力させてくれ。人数も戦争出来るほど増えているわけじゃないけど、露払いくらいはできる。それにナイコビ商会を倒すのは俺達の目的でもあるからマルコイさん達だけに背負わせるわけにはいかない。」


「…‥‥わかった。でもあんまり無茶はしないでくれよ。あくまであいつらの狙いは俺たちだ。でも‥助かるよ。」


「ありがとう。決行日は一週間後だ。よろしく頼む。」



ついに決着の時だ。

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