第353話

俺たちはリルの意識が戻るのを待つ事にした。


「でもなんでこの娘が暗殺に加担してないってわかったの?」


「ああ。この魔族はリルって名前らしいんだけど、俺が倒した魔族が気になる事を言ってたんだ。人族も獣人族も殺す事ができない役立たずだってね。だけど彼女は強いから一緒に行動してたってさ。」


だから俺は彼女からなら何か話が聞けるかなと思っていた。


でもまさか洗脳されているとは思わなかったけどな。


「それに魔族はリルとは組まされていたとも言っていた。だから彼女は自分たちの意思で暗殺行為に加担してた訳じゃないのかなと思って。俺が倒したやつは自分から進んで加担するような最悪のやつだったけどな。でも魔族としてはそれが普通でリルの方が特殊なんだろ。じゃないと魔族以外滅ぼそうなんて考えにはならないだろうしな。」


「そうなんだ‥」


たがそれでもリルは魔族だ。

たとえ洗脳を解いたとしても戻ればまた何かしらの処置をされるかもしれない。

だからと言って俺たちが魔族を保護するわけにはいかない。


そんな事をすれば俺たちの身が危うくなってしまう。


アキーエたちのためなら打倒魔族をうたってる神聖国とも喧嘩するが、見ず知らずの魔族のためにそんな事はできない。


「うっ‥」


どうやらリルが気づいたようだ。


「あ、そうか‥私負けたんだね。」


「そうだ。何か身体に違和感はあるか?」


思考誘導か洗脳かわからないけど、解けたのなら何かしらの変化はあると思う。


「ん?別に特に変化はないよ。それよりも何で私は生きてるんだ?」


変化はないか‥


残念だけど、アキーエの願いを聞く事はできないみたいだ。

このまま城に連れて行くしかないだろうな。


「それはお前が何かに操られているように感じたからだ。できれば助けてやりたいと仲間が言ったからな。」


するとリルは少し考えるような表情をする。


「そういえば少し頭がすっきりした感じがする。今までずっとモヤが頭の中にあったけどそれが少し晴れた気がするかな。」


そう言いながら頭を少し振る仕草をする。


少しは洗脳が解けたのか?

確かに戦っている時よりも少し話し方が変わった気がする。

戦っている時は幼い娘と話しているような感じがしたが、今は歳相応な感じがする。


魔族の年齢などわかりはしないが、人族でいうと18歳前後くらいだろうか?

俺たちとあまり変わらないような気がする。


肩くらいまでの白い髪を頭の後ろで縛って垂らしている。


人族なら10人中10人は振り返るような綺麗な顔をしている。

まあ魔族の特徴である赤い瞳をしているから、見た人はみんな逃げて行くと思うけど。


しかし少しは解けたのか?

光属性の攻撃がよかったのかもしれないな。


「マルコイの光属性の攻撃がよかったのかな?もしそうなら今度は直接洗脳されていた頭に光の力を流したらどうかしら!」


あ、あのアキーエさん。

魔族にとって光属性は弱点みたいなものなんですけど‥

それを頭に直接って‥

た、たしかに解けるかもしれないけど‥


「ほらマルコイ!流してみて!」


アキーエはリルの身体を抑えて動かないようにしている。


「な、な、何をする気だ?は、離してくれ。痛いのは嫌だ!」


「ほらっ!」


すまないなリル。

アキーエさんのキラキラした目には逆らえない。


俺はエンチャントを全属性発動させて更にエンチャント:光を発動させる。


そして光を両手に集めてリルの頭を両手で挟む。


「すまないな‥」


「な、なにが?何がすまないの?」


光の力を頭に流し込む‥


「あばばばばば」


うむ。

ちょっと反応が面白い。


少し流したところで止めて反応を見る。


「どうだ?」


「どうだも何もないわっ!何をするのよいきなり!‥‥あれ?さっきより少し頭がすっきりし‥あばばばばばば」


ふむ。

何故かわからないけど、もう少し頑張ればいけそうな気がする。


「だから何するん‥あばばばば」


郊外にある屋敷の怪談に浮かぶ小さな人形、血を流す人形以外に真夜中に聞こえる奇声が加えられた‥

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る