第352話
あ、危なかった。
リルの剣撃を紙一重で躱す事ができた。
リズムを急に変える事でタイミングをずらしてきた。
その上剣速が速すぎて首が無くなったかと思った。
さっきの魔族とは比べ物にならないくらいの剣撃だ。
こりゃ確かにさっきの魔族が加勢に呼ぶわけだ。
2人一緒だったらヤバかったかもしれない。
転移トラップ仕掛けててよかった。
「あれ?避けられた。あんたもやっぱり強いんだ?さっさと倒して帰るつもりだったのに。しょうがない本気でいくよ!」
そう言うとリルは剣を構える。
一旦距離をとり俺も剣を構える。
さっきの魔族とは格が違う。
リルが間合いを詰めて連続で剣撃を放ってくる。
ひとつひとつがおそろしく速い。
エンチャント:爆風を使いスピードを上げて何とか剣で防ぐ。
しかし防御しきれず幾つか手傷を負う。
エンチャント:土塊も使い自身の防御力を上げる。
これで躱しきれない剣撃もそこまでダメージを受けないはず。
「ふぅ。あれ?全部防がれた。おかしいな。」
なんだコイツ。
やはりさっきの魔族とは段違いだ。
「あ〜もう!こんな怖い物がたくさん出てくる家から早く帰りたいのに!もう帰りたい!いや、でも帰れないから‥倒さないと帰れないから殺さないと。殺さないと殺さないと殺す殺す‥」
するとリルの顔から表情が抜け落ちた。
「マルコイ!この娘遠距離からも攻撃してくるわよ!気をつけて!」
アキーエとミミウが此方に寄ってきてそう告げる。
遠距離からの攻撃?
魔法でも使ってくるのか?
そう思っているとリルは腰だめに剣を構える。
「斬:風狼」
リルは俺たちから少し離れた場所から剣を振る。
するとリルの剣から白い三日月の形を持った剣撃が放たれる。
ミミウが俺の前に立ち剣撃を盾で防ぐ。
ミミウは防ぎはしたが、その威力で少し後退させられた。
「アキーエ。光の力で攻撃する。フォローを頼む。」
するとアキーエは少し困った顔をする。
「マルコイ‥あの娘多分洗脳されてるわ。どうにかして助けてあげる事はできないかしら?」
洗脳?
今まで戦ってきた魔族は大小はあれど思考誘導されていたようには感じる。
しかし洗脳だと‥?
「わからない。とりあえず光の力で攻撃するけど、刃のない方でやってみる。」
「ありがとうマルコイ。それでいいわ。もし洗脳が解けなかったら倒すしかないと思ってる。でもやれる事はやってみたい。」
アキーエはそう言うと拳を握りしめる。
「それじゃ行くぞ。ミミウは相手の攻撃を頼むぞ。」
「わかったですぅ!」
俺たちはリルに向かい駆け出す。
牽制のためかリルが剣を放ってきた。
む?
先程とは違い剣にそこまでの速度がない。
ミミウが『ノーム』を取り込んだ盾で剣が防ぐと同時に盾の突起を利用して剣を上方向に弾いた。
それを見てアキーエが飛び出す。
俺はエンチャント:光を発動させてアキーエと共に回り込む。
アキーエが拳で攻撃する。
体勢を崩しながらも何とか躱すリル。
しかし体勢を崩したところに俺が攻撃する。
光属性の攻撃だが今回は剣の刃がない方で攻撃した。
リルは俺の光属性の攻撃を喰らい膝から崩れるように倒れ込んだ。
「彼女なんだったんだ?」
リルが意識を失ったのを確認して近づく。
「わからないわ。でも明らかに言動や態度がおかしかったの。だから洗脳されていると思って。でもよく考えたら洗脳されていたとしても魔族だから助ける必要はなかったのよね。ごめんねマルコイわがまま言って。」
「いや構わないよ。でもどうするんだ?このまま捕まえて国にでも突き出すか?」
「そうね。いくら洗脳されてたって言っても今回と同じように誰かを襲ってたはずだからそうしないといけないわね。」
そう言いながらアキーエは納得のいかないような表情をしている。
「彼女は暗殺には加担してないらしいよ。」
「本当!だったら‥」
だからと言って彼女は魔族だ。
それにさっきので洗脳が解けたのか?
解けてなかったとしたら解く方法がわからない。
どうしたものか‥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます