第347話
アキーエとミミウは魔族の女リルと相対していた。
「ふん。2人なら何とかなると思ってるわけ?格の違いを教えてあげるわ!」
リルは腰から剣を抜くとアキーエとミミウに向ける。
片刃の剣で何となくマルコイの剣に似ている。
構えから何となくで剣を選んだ様子ではなさそうだ。
そう思いアキーエは気を引き締める。
アキーエはマルコイからもらったガントレットを、ミミウはタワーシールドと短槍を装備している。
「ミミウは精霊を使って攻撃を防御して。わたしは魔法拳で隙を見て攻撃するわ。」
2人は攻守にわかれて魔族を迎え撃つ。
「ノームさんお願いしますぅ。『召喚重装:ノーム』」
ミミウのタワーシールドに土の精霊である『ノーム』が入り込む。
するとタワーシールドが形状を変えていく。
ミミウが持っていたタワーシールドはその大きさを1.5倍程大きくした。
表面は剣の対策なのか幾つもの突起がついてデコボコしている。
「なんだよそれ!何で形変わってんだよ!」
「うるさいわね。戦ってみればわかるでしょ?」
「なんで教えないんだよ!きたないぞ!」
リルはその場で地団駄を踏んでいる。
先程まで音も立てずに侵入してきた暗殺者とは思えない素振りだった。
(もしかしてこの人も思考誘導されてるのかな‥)
アキーエはそう思いはしたが、例えそうであったとしても現時点ではマルコイを狙って来た襲撃者である。
それについては今はどうする事もできない。
なら全力でこの場に足止めして、マルコイが来てから相談すればいい。
そう気持ちを切り替え、アキーエはリルに攻撃する為に様子を伺う。
リルは先程まで地団駄を踏んでいたが、それをやめて此方に視線を向けていた。
「もういい。このケチめ。教えてくれなくても戦えばわかる事だし!」
そう言ってリルはミミウに向かって駆け出す。
速い。
流石魔族だ。
そのままミミウの間合いに入り剣で斬りつける。
「どんな形していても斬ってしまえば一緒だ!」
リルは剣で横から水平にミミウの盾に斬りつけた。
おそらく盾ごと斬ってしまうつもりだったのだろう。
それが当たり前のように最初から盾を狙っている。
盾は相手の攻撃を防ぐのが目的で作られている。
そう安易と斬れるものではない。
しかしリルは斬れるのが当然のように斬りつけた。
確かに剣速がおそろしく速い。
アキーエの目でも正直追うのがやっとのレベルだ。
確かに並の盾なら一刀両断してしまいそうな速度である。
(でもあんたが相手してるのは防御に特出してる娘よ。並の相手と思ったのが敗因ね。)
アキーエはリルに対して間合いを詰める。
リルはアキーエが近づいて来ているのがわかり、盾を斬った後に斬り返すつもりで動いた。
しかしリルの思惑は外れ、盾を斬るどころか剣はあらぬ方向へ弾かれた。
「そんなんじゃミミウの盾は斬れないですよ?」
「なっ?」
体勢が崩れてしまったリルに対しアキーエが迫る。
避けるには間に合わない。
たがたかが格闘士の攻撃だ。
片手で充分防御できる。
リルのその予想もまた間違っていた。
アキーエをただの格闘士と思ってしまった事が。
アキーエの拳はリルの左腕で防御される。
しかし防御したはずの拳から炎が噴き出た。
「ぎゃーっ!な、なんで拳から火がでるのよ!」
何も考えずに受けてしまったが為に、腕には軽くないダメージを受けてしまった。
「あんたもただの格闘士じゃないのかよ!もう何なんなのよ一体!」
リルは腕の具合を見るためにアキーエ達から距離をとる。
「逃がさないわよ。」
するとアキーエは魔力媒介であるガントレットを使用して魔法を放つ。
「弾けよ!灼熱の炎矛!」
「何で魔法まで使えるの?どうなってるんだよ一体!」
うーん、わたしが魔法使うと大体おんなじ反応よね。
そんな事を思いつつアキーエはリルに魔法爆撃を続けるのだった。
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