第346話

とりあえず鑑定を試してみる。


「何もさせんぞ!」


魔族はすぐに気づき、会話は終わったと言わんばかりにマルコイに向かって迫ってきた。


やはりこの距離だと簡単に気づかれるな。


マルコイはエンチャント:火を使い魔族を迎え撃つ。


魔族は両手に短剣を持ち、片方の短剣を縦に斬りつけてきた。


剣で受け止めはしたが、短剣とは思えない力で弾かれた。


すぐにもう片方の短剣を使い水平に斬りつけてくる。


エンチャント:暴風を使い後ろに下がり短剣を躱す。


やはり強いな。


闘技会が終わって散々模擬戦をやってきたが、やはり魔族は格が違う。


膂力やスピード、その一つ一つが高水準だ。


単純に身体能力だけとれば獣人族で勝てるやつがいると思うが、それに魔力まで長けてるんだからな。

それこそAランク上位かSランクの冒険者じゃないとまともに戦えないと思う。


まあしかし魔族も他の種族を軽視し過ぎているとは思うが。

リュスティングはもちろんロメントも魔族相手に遅れはとらないと思う。

まああのクラスの冒険者がごろごろいればの話にはなるが。

そう言えばあの変態エルフと嫁探し筋肉は何をしてるのだろうか‥

変態エルフなど闘技会の準決勝前に別れたまま会ってないな。


それはさて置き魔族に1番効果的なのは光の力を使って攻撃する事だが、それは本来勇者しか持ってない力だ。

俺を除けば。


「ふん。よく避けたな。」


魔族は笑みを浮かべながら言う。


「しかし偶然はそう続かないぞ。まあ無様に逃げ回る事だ。必死にな。」


「お前らはいつからサントバルに協力しているんだ?」


「答えると思うか?まあ1つだけ教えてやるとしたら、この国で暗殺をするのは初めてではない。お前のような商会長を同じように暗殺してきた。お前のように罠まで仕掛けて抵抗してきたのは初めてだがな。」


それじゃあ他の商会長を暗殺したのはこいつらって事か‥


「教えてやるのはここまでだ。後はあの世で考える事だな。」


魔族は再度こちらに向かい駆けて来た。


それじゃあこっちも少し本気を出しますか。


俺はエンチャント:爆炎と暴風を使い魔族に走り寄る。


魔族は俺が向かって来た事に多少の驚きはあるようだが、短剣を構えて迎撃しようとする。


俺は力を込めて上段から剣を振り下ろす。


魔族は片方の短剣を使い受け止めようとする。

その後にもう1本の短剣で攻撃するつもりだろうけど‥


エンチャント:爆炎を使った俺の剣撃を短剣1本で防げると思うなよ。


俺の剣は魔族の短剣を弾き魔族の体勢を大きく崩させる。


「なっ?」


俺は返す剣で水平に魔族に斬りかかる。


魔族は腕で受け止めようとしたが短剣が弾かれた事を考え回避に切り替える。


しかし完全に避けれはせずに腕から鮮血が飛ぶ。


「な、なんだと?」


お前舐めすぎだ。


俺の事をまだただの商人とでも思っているのか?


「すまんが、俺はお前がさっき言っていた高ランク冒険者ってやつだ。」


魔族は驚いた表情でこちらを見ている。


今度はこちらから魔族に向けて走りだす。


同じように上段から剣を振り下ろす。

すると今度は短剣をクロスさせて俺の攻撃を防ぐ。


魔族は無理矢理押し返し距離を取る。


俺はそのまま追撃をかける。

魔族は更に後ろに下がろうとしたため、後ろに時空魔法で空気の壁を作る。

魔族相手には一瞬で消されてしまうだろうが、その一瞬で十分だ。


空気の壁に当たり、魔族の動きが一瞬止まる。

その隙を逃さず斬りかかろうとすると魔族は手にした短剣をこちらに向けて投げつけて来た。


短剣を躱した隙に魔族は俺から離れた。 


「ちっ‥まさかここまでとはな。1人でお前を片付けるのは骨が折れそうだ。」


すると魔族は更に俺と距離を取る。

そして息を吸い込むと大きな声を張り上げた。


「おいリル!どこにいる!対象はここだ!手を貸せ!」


なるほど。

もう1人を呼んで2人で俺と戦おうって事か。

でもたとえ魔族でもこっちに安易と来れるとは思えないぞ。

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