第344話

突然床が光ったかと思えば、一緒に侵入した相方がいない。


どれだけ驚いたかな?


まあ種明かしをしてしまうと、床を踏んだ襲撃者を別の部屋に転移させたんだけどな。


しかし転移なんて初めての経験だろう。


普通なら大パニックだな。


俺は残された方の襲撃者の元に向かう。


すると襲撃者は俺が来るのがわかっていたのか、その場から動かずにいた。


「こんばんは。どうだった?俺のおもてなしは?なかなか楽しかっただろう。」


「ふん。お前がマルコイのようだな。随分と手の凝った罠だ。多少腕に自信がある程度と思ったが、それだけじゃなかったようだ。前回の襲撃者が未知の罠にかけられたと言っていたから多少の罠は警戒していたが想像を超えていた。お前いったい何者だ?」


「聞いてて俺を狙いにきたんだろ?ホット商会のマルコイだよ。」


「ふん。たかが商人がここまで俺達を翻弄できるとは思えんがな。まあいい。こうやって目の前に出てきてくれたんだ。過程がどうあれ、お前が死ぬ結果は変わらん。」


随分と自信があるようだな。


「そうか?まだ罠があるかもしれないし、もう1人はすでに捕まってるかもしれないぞ。それでも俺に向かってくるのか?」


襲撃者はフードを脱ぎさる。


すると鍛え上げられた肉体を持つ男がそこにはいた。


「構わん。多少手こずったとしても結果は変わらん。それにアイツも俺と同じだからな。近くにいるのであれば問題ない。どんな罠だろうが強者と戦わせようが結果は同じだ。」


「確かにそのようだな。まさか襲撃してくるのがお前らとは思わなかったぜ。」


俺はフードを脱いだ男の顔を見た瞬間に警戒を強めた。

正確には男の顔ではなく‥



その真っ赤な眼を見た瞬間に‥






アキーエたちは襲撃者が転移で飛ばされる予定の部屋の近くで待機していた。


なぜ部屋に入らないかというと転移してくる部屋には罠が仕掛けてあるからだ。


正確には罠ではないが、部屋に入ると巻き込まれてしまう。


部屋が薄く光り襲撃者が転移してきたようだ。


それと同時に何かが動く音が聞こえる。


アキーエはこっそりと部屋の中を覗く。


すると部屋の中にいた2体の殺戮人形がゆっくりと動き出したところだった‥



殺戮人形はアキーエの部屋の前に設置される予定だったが、マルコイとの穏便な話し合いの結果別の罠と連動する事になった。


それが転移する罠の転移先に設置するというものだった。


その罠が今まさに作動した。


単純に火力はとんでもない事になっている。

移動する火炎放射器が2台あり、尚且つそれが宙を舞うのだ。


そしてお決まりのように薄暗い部屋の中で人形の顔には血痕が付いている。


「罠にかかったか‥すでに侵入した事に気づいてたわけね。」


フードを被っている人物が転移してきたが、誰かいると思っているようだが、相手が人形だとはまだ気づいていないようだ。


「な!人形?な、なんで勝手に動いてるわけ?ひっ!」


迫って来る殺戮人形に気づき、驚きの声をあげる。


「う、動く人形くらい‥」


すると1体の人形が宙に浮く。


「ひっ!お、お前も飛ぶのかよ。」


2体の人形が女に迫る。


「ひひひ‥」


女から笑い声が聞こえて来る。


「ふふふ、ふひひひ!もう知らない。もう暗殺なんて関係ない!こんな屋敷全部吹っ飛ばしてやる!ひーひっひっひ!私がこんな怖い思いをするのは、この屋敷のせいだ!こんな物綺麗になくなってしまえ!」


フードをかぶっているのは女性のようだが、精神的に不安定になっているのか笑いながら魔力を練っている。


それを見ながらアキーエはそっと扉を閉めた。


すると数秒後に部屋の中で破裂音がした。


「な?なんでえ?何も壊れないなんて?」


アキーエは再度扉を開けて中を覗く。


どうやら殺戮人形も壊れていないようだ。


アキーエは女の動きに注視しながら、部屋の中で行われる女と殺戮人形の戦いを見つめるのだった。

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