第343話

フードを被った2人組がセイルズの街を歩いていた。


もう真夜中というのに特に灯りもなく進んでいく。


一軒の大きめな家を見つけると2人はお互い頷き、首元の布を口に当てた。


2人は家の周りを一度確認すると玄関まで戻ってきた。


1人が腰から剣を抜くと、扉に向かい一閃する。

小さな金属音がした。


もう1人が扉に手をかけると鍵がかかっていたはずの扉が開いた。


扉の内側にかけられていた鍵は綺麗に真っ二つに切られている。

他の部分は切れた様子もない。


それだけで恐ろしい程の技量を持っているのがわかる。


2人は家の中に入る。


少し長い廊下だが他に変わった所はない。

2人は慣れている様子で周りを警戒しながら進み出す。


すると1人が台所を通ろうとした時だった。

足元の床が少しへこんだかと思うと足に勢いよくロープが巻かれて上方に吊り上げられそうになる。

もう1人が異変に気づき手に持つ短剣ですぐにロープを切るとロープに足を巻かれた方は床に尻餅をつく。


それまで何の表情も浮かべていなかった顔に初めて警戒の色が浮かぶ。


お互いが指を動かしてサインのような物を送る。

すると1人が中腰の状態で少しずつ歩みを進める。


その警戒しながら進んでいる目の前を小さな何かが通り過ぎた。


いや‥

目の前を通った物は通り過ぎずにそこに留まっている。


そちらに目を向けると眼から血を流した人形が浮かんでいた‥


悲鳴をあげそうになったのを懸命に我慢して後退りする。


後ろに控えていた者が下がってくる者の代わりに前に出て、鬱陶しそうに人形を払う。


するとその人形が‥


けたたましく叫び声を上げた。


「ぎゃーっ!」


払った者も流石に驚いたのかビクッと震える。


後退りしていた者は腰を抜かしたかのように尻もちをついている。


あまりの衝撃に呆然としていたが、我にかえりしばらくそのままの状態で待つ。

かなり大きな声だったが、家主が起きる気配もないため手でサインを送り合う。


2人はあまりの罠に警戒を更に深めて慎重に慎重に進み出した‥


その後も突然抜ける床や浮遊する人形などがあったが、何とか切り抜けながら歩みを進める。


そして部屋の扉が見える場所に着き、1人が前に進み出すと‥



床が突然光った。



そして光が収まると‥



襲撃者は1人になっており、もう1人は姿を消していた‥






何か来る。

そう俺の直感がいっている。


スキル【直感】はスキル【予測変換】に統合されてはいるが、大事な時には活躍してくれるらしい。


それとも第6感というやつかな。


俺は夜中に目が覚めてそう思った。

今日が襲撃の日か‥


【察知】が反応する。

襲撃者はスキャンからの報告通り前回と同じで2名のようだな。


俺は外していた装備をつけて部屋を出る。


襲撃者はまだ外にいるようなので念のためにアキーエを起こし全員を起こすように伝える。


俺はそのまま廊下で待機する。


部屋はみんな固まった場所にしているが、襲撃者がどこから入ってくるかわからないからな。


襲撃者は窓を一通り調べた後に玄関に回った。


よし!

1番罠を設置している場所だ。

張り切って引っ掛かってもらおう。


襲撃者は鍵のかかった扉から入ってきた。

鍵を開けたか、何かスキルを使用したのかまではわからない。

何か映像が見れるようなスキルが有ればいいんだけどな。


しばらく待っていると台所の罠が作動したようだ。

しかしそのまま前に進んできている。

先程よりもゆっくりと。


襲撃者は足音を立てずにこちらに近づいてくる。


「ぎゃーっ!」


お!

布人形が反応したようだ。


襲撃者たちはその場所から動かない。


腰を抜かしたか?


ふはっ!


今のところ順当に罠に引っ掛かってくれてるな。


作った甲斐があるってものだ。


しかしその後の罠にはかかる様子がない。

かなり警戒しながら進んでいるようだ。


しかしどれだけ警戒しようと最後の罠は見破る事はできないけどな。


そろそろ襲撃者とのご対面になる。


遊びはここまでだ。


気を引き締めて当たるとしよう。


いや、元から遊んでないけどね!

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