第338話
羽根人形は概ね皆に好評であった。
なんで概ねかって?
それはうちのアキーエさんが迂闊に羽根人形に魔力を込めたからですよ。
俺と違い、今は魔闘士ってスキルにはなっているが元々魔法使いだったアキーエさんは込めた魔力が俺より多かったようで、かなりのスピードが出ました。
なぜ魔力を込めたらダメだって言っていたのに魔力込めるかなぁ。
結果アキーエが吹っ飛んだ。
幸い気絶まではなかったので大事には至らなかったけどもう少しで世界の果てまで飛んでいくところでした‥
しかし魔力を込めるたびにそれだと問題があるので、魔力を貯める容量を大きくした魔力回路に追加する事で魔力を効率良く使うようにした。
そして速さについてはこれも言葉による指示で上げる事ができるようにした。
おかげでアキーエも恐る恐るですが飛べるようになりました。
本当によかったです。
アキーエが降りてきた時に手に魔力込めて撲殺魔法拳を羽根人形に放とうとした時には全力で止めたからね。
しかし結果として拠点防衛を検討していたら、パーティの戦力アップになるという嬉しい誤算となった。
パーティ全員が飛べたので追加の羽根人形の作成に取り掛かろうとするとそれまで見ていたアレカンドロがこちらに寄ってきた。
「マルコイ殿!出来れば自分も試させてもらってもよろしいでしょうか?」
ん?
別に練習する分はいいが、羽根人形をパーティ以外に渡すつもりはない。
アレカンドロなら渡してもいいが、俺たちもずっとロンギルに居るわけではない。
獣人国に帰った後に羽根人形を狙われてアレカンドロが襲われたなどとなってしまったら後悔してしまう。
「いや、アレカンドロに‥」
「はいアレカンドロ。」
俺が何か言うよりも早く、アキーエは背負っていた羽根人形を外すとアレカンドロに手渡す。
アレカンドロは嬉しそうにフルアーマーの上から背負うと羽根人形に指示を出し始めた。
すると羽根人形が浮力を‥‥得なかった。
いや、浮いてる浮いてる。
地面からギリギリ離れているように見える。
なんか羽根人形が必死に頑張っている姿が見えるようだ‥
「いやアレカンドロ。鎧は脱いでからじゃないと。」
「しかしマルコイ殿!鎧を脱いでいたら降りて戦う時不便であります!」
いやまぁそうなんだけど。
アレカンドロに渡すなら、もっと高出力の羽根人形を渡す必要があるのかな?
渡す機会があればだけど。
アレカンドロはとりあえず鎧を脱いで練習を始めるようだ。
あんまり無茶はしない堅実な扱い方だな。
しかし練習しても‥
「アレカンドロなら別に大丈夫よ。練習させても特に問題はないわ。」
横からアキーエがそう言ってくる。
「いや、アレカンドロに羽根人形を渡してしまったら、そのせいでアレカンドロが狙われるかもしれない。この間はたまたまロンギルに来たから助けられたけど、ずっとロンギルにいるわけじゃないだろ?だとしたら渡すのもどうかと思うんだよ。」
「それでも大丈夫よ。マルコイは心配性だからアレカンドロにはなるべく早く話に来るように言っておくわね。」
何の事かわからないけど、アキーエが大丈夫と言うならいいか。
当のアレカンドロは鎧を脱いだ事で空高く舞い上がっていた。
「そう言えばマルコイ。防衛手段は必要なんだけど、こんなにゆっくりしていていいの?わたしはすぐにでも『カッカス』が襲ってくるんじゃないかと思うんだけど‥」
アキーエが不安そうな顔で言ってくる。
いや、アキーエなら大丈夫。
その辺に落ちてる襲撃者なら秒で撃退できる。
「そうだな。アキーエなら一回襲撃に失敗した相手をもう一度襲うとしたらどんな奴を送り込む?」
「そうね‥わたしだったらもっと強い人かそれに長けてる人を送るわね。」
「確かにそうなる。だからこそすぐには来ないと思うよ。」
確定ではないけどな。
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