第337話

とりあえず新しい人形には盾のみ持たせる事にした。


最初は前の人形のように銃もどきを持たせようと思ったけど、魔力回路を攻撃と防衛に全て回す事ができるので武器を持たせる必要がなかったのだ。


火を発生させる魔力回路をまとめて5個手につけた。

腕全体に魔力回路を這わせる事になったけど、指先を合わせて使用すると特大の火が指先から発せられた。


もうね、異世界にある火炎放射器みたいだった。


後は反対の腕は切り離せるようにした。

肘のあたりに風の魔力回路をつけて、猛スピードで敵に突撃する腕だ。


そう。

異世界の知識で得たロケットパンチという男のロマンである。


木の人形につけるのは残念だが、そのうち鉄で作った人形につけたいと思っている。


後は胴体に硬化の魔力回路をつけた。

これで完成でもよかったのだが、俺は魔力が回復してから別の人形を作る事にした。


正確には人形ではないんだけど、スキル【スードウクリエイター】で作るので人形になるのかな。


作った人形は羽根だ。

木を使用するのだが、魔力回路で硬化する事で薄くても壊れない物にした。

それと風の魔力回路もつけて浮力を得る。

人工核には言葉で制御する機能しか付けていないので、そこまで魔力は持っていかれなかった。


それで張り切って3個作ったら死にかけた‥


これで襲撃者が逃げても空を飛んでどこまでも追いかけるジェノサイドハンターオートマタの完成だ。

名前の語呂が悪い。


羽根人形が2つ余ったが、1つはもう一体作る予定のジェノサイドハン‥‥殺戮人形につけるとして、一体余ったので人も飛べるのか検証してみた。


試しに俺が使ってみる。

もし何かあっても空間魔法があるので地面に落ちることもないからな。


「浮かべ。」


俺がそう告げると、羽根人形は風を下方に放ち俺の身体を浮かせる。


おお!

ちょっと怖いけど浮かぶ事ができた。


魔力は取り付けた魔力回路のおかげで周りから吸い込み溜め込んでいる。


その為言葉で指示するだけで浮かんだり進んだりする事ができる。


それじゃあ魔力をこちらから送り込むとどうなるか‥


はい。

恐ろしい程のスピードが出ました。


多分これだと30分くらいでナーメルの街まで着きそうだ。


俺が空間魔法を駆使して走るより断然早い。


問題は顔に当たる空気がヤバい事かな。

下手したら息が出来ないくらいです。


魔力回路で風に対する処理をしとかないと気絶したまま世界の端まで連れて行かれそうだ。

その前に魔力が尽きて落ちると思うけど‥


しかしこれは便利だ。

パーティ分作成して『スペース』に入れておけば非常時の移動手段として使えるぞ。


今日はキリーエも家でホット商会の人と今後商会に入れるべき商人や店舗の話をしていたので家にいる。

そこでせっかくなので全員で羽根人形を試してみる事にした。


しかしこのスキルも恐らく偉い人にバレたら監禁案件だと思うから、ホット商会の人とはいえ見られるのは問題があるんじゃないかとキリーエに伝えたが、今家に来ている人は俺を神扱いしている人だから問題ないそうだ。


‥‥‥。

いや、俺にとって問題あるぞ。

なにそれ、俺知らない間に神認定されてるみたいです。


それに今の俺の実力とホット商会の財力があれば、国とはいえ早々手出しはできないから大丈夫だそうだ。


ありがたいけど、過大評価してないかな?


それはさておき、まずは羽根人形のお試しだ。

まずはミミウからチャレンジする。

ミミウが目をキラキラさせて面白そうと言っていたので最初に試してもらったのだ。


「浮くですぅ。」


ミミウがそう告げると羽根人形が浮力を持ちミミウの身体を空中に運ぶ。


「進むですぅ!」


そしてミミウは空中を飛び回った。

おっとりとした口調だが、羽根人形に的確に指示を出して自由自在に動き回っている。


おお!

凄いな。

しかしあれだけくるくる回っていると酔いそうだ。


「楽しかったですぅ!」


無事に空の旅を終えて戻ってきたミミウは顔を紅潮させて興奮していた。


「ミミウの分もちゃんと作るから安心していいぞ。」


「わーい!やったですぅ!」


ミミウさんや、喜んでくれて何よりだが、おもちゃじゃないからね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る