第325話
まさか難癖つけてきたのが『カッカス』とは思わなかった。
遊具も売れてるし、いよいよ静観できなくなったかな?
フーラさんがフライをこちらに持ってきていたが、声を聞いて料理を置いてからすぐに向かっていった。
俺は空間魔法の『スクレイプ』を虫だけ引き寄せる程度の威力で使用する。
試した事なかったので緊張したけど、上手い具合に虫がこっちに引っ張られた。
フライが1つついてきたのはご愛嬌。
俺はフーラさんの後を追うように席を立つ。
そして下に落ちている虫を回収する。
男たちはフーラさんの方を見ており気づいてないようだ。
「あんたがこの店の店長さんかい?こんな虫が入るような不衛生な環境で料理を作ってるなんて天下のホット商会さんもたいしたタマだな。」
「そ、そんな‥店では毎日清掃していますし、特に厨房は髪の毛も落ちないように徹底しています。そんな虫が入るような事があるとは‥」
確かにフーラさんもそうだが、ホット商会の厨房に入る人は髪の毛をしっかりと結んで頭に布を巻いている。
厨房を使わせてもらった時も綺麗にしており、衛生面に気をつけているのがわかった。
「はあ?それじゃこの虫はなんで入ってるんだ?料理が美味しそうだから自分で飛び込んできたのか?ほら実際入ってるこの虫を見てもそんな事が‥あ、あれ?虫はどこ行った‥?」
けけけ。
残念だったな。
虫は俺のポケットの中だ。
虫をポケットに入れるのは結構勇気がいったんだぞ。
しかし随分と小さい嫌がらせだな?
それともここを起点に難癖つけていく予定だったのか?
まあそんな事させないけどな。
「あ、あれ?お前確かに入れたよな?」
「ほほう。何を入れたんですか?天下の『カッカス』さんがまさか自分たちで料理に何か入れたりしたんですか?」
俺は2人組の男に声をかける。
「な、なんだお前は?そんな事俺達がするわけないだろうが!料理が運ばれてきた時にはすでに虫がはいってたんだよ!だいたい関係ないやつが出てくるんじゃねえよ!」
「いやいや、関係なくないですよ。自分はこのホット商会の会長のマルコイといいます。最近ロンギル共和国に出店しているんですが、もっとよりよいサービスを提供するためにこの国にやってきました。以後お見知り置きを。」
「なっ!」
2人組の男は顔を見合わせる。
「おい!ホット商会の会長は女じゃなかったのか?」
「確かに俺も女だと聞いていたけど、どうする?」
明らかにキリーエ狙ったのこいつらだよな‥
ここでぶっ叩きたいところだが、こいつらをやったところで本命までは辿り着かないからな。
「あなた方は『カッカス』と言われましたね。いもしない虫で、そんな因縁つけられるなんて思ってもいませんでしたよ。何かうちの商会に思うところがありそうですね。今度ご挨拶に伺う事にしましょう。」
俺がそう言うと苦虫を噛み潰したような顔をした2人はそのまま席を立ち帰って行った。
「よかったんマルコイさん?マルコイさんが商会会長だって言ったら相手がマルコイさんに何かしてくるんやない?」
「それこそこっちの狙い通りだ。キリーエに危ない事させたくないからな。もし狙うなら俺を狙ってくるだろ。そうじゃないとわざわざ名前言った意味がない。向こうはキリーエが会長と思ってるかもしれないけど、今日の出来事で嘘だと思っても俺の事無視できないだろ。」
もしかしたら今日にでも行動してくるかもな。
俺の手札はいない虫で因縁つけてきた事と、無銭飲食だな。
金払えって思ったけど、そのままにしてた方が面白そうだしな。
『カッカス』の拠点にお金を払ってもらえませんか?って乗り込むのも面白い。
まだまだ手札が少ないけど、少しずつ増やして真正面から喧嘩売れるくらいにしてやる。
相手に強いやつがいたとしても今の俺たちなら、そうそう後れをとることはないだろう。
さて『カッカス』はどう動いてくるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます