第319話

「それでは土地の確認を行った後に再度訪問させてもらいます。」


「わかりました。ご訪問お待ちしていますよ。」


俺たちはその場で握手を交わす。


「ところでそちらの2人の麗しい女性はマルコイ殿のお仲間ですか?」


キリーエは綺麗だと思うが、ミミウは可愛いだと思うが‥

ほら、今も難しい話してたから涎垂らして寝てるし‥


「そうですね。此方はキリーエ。ホット商会の副会長をしてもらってます。実質彼女がホット商会を運営していると思ってもらって結構です。そして彼女はミミウ。私の冒険者仲間になります。」


「ほう!確かに手紙に書いてありましたが、本当にマルコイ殿は冒険者なのですね。なんでも獣人国の闘技会で優勝されたとか。私は誰が強いなんて事にはあまり興味はなかったんですが、そんな私でもそれがどれだけ凄い事かはわかります。」


ポッサムさんはそこまで一気に言うと此方を覗き込むような視線を向けてきた。


「ところでマルコイさんはなぜロンギル共和国まで来られたんでしょうか?うちとしてはセイルズで新しい商いをしてもらえば収益もあがりますから大変助かるのですが、それだけのために来られたわけではないですよね?」


そりゃやっぱり気になるよな。

できればあまり此方の人に話すつもりなかったんだけど‥


「そうですね。それだけが目的ではないですね。はっきり言ってしまうとご迷惑をかけてしまうかもしれません。下手するとポッサムさんにもご迷惑をかけてしまうかもしれませんから。」


「そうですか‥‥ならここからは私の独り言です。ナイコビ商会はこの国の商会を統一しようとしているようです。そうなってしまうと色々と問題がある。できればどこかの商会がそれを防いでくれると国としても非常に助かります。ですが、国民人気の高い傭兵団を抱えている商会なので、なかなか手が出しにくいところではありますね。なので国としては多少対抗される商会の方が無茶をしたとしても見て見ぬふりをしようと思いますね。まぁそんな商会がいてくれたらの話ですけどね。」


ポッサムさんは此方を見ながら笑顔でそう言った。


う〜ん。

国としてもナイコビ商会は目障りのようだな。

これなら多少無理矢理に揉めたとしても問題ないかもな。

しかしあくまでポッサムさんの考えだ。

向こうに味方した方がいいと判断されたら、すぐに手のひらを返されるかもしれない。

あまり信頼するのもいけないようだ。


でも現時点ではこちらの味方と思っておいていいだらう。


「なるほどわかりました。ありがとうございます。」


「いえいえ、あくまで私の独り言ですから。」


俺は頭を下げてポッサムさんの部屋を退室する。

受付の人にも挨拶して領主館を後にした。


「さっきのポッサムさんだけど、さすがに国の中核を担う人やね。一癖も二癖もありそうだった。」


「そうだな。此方を敵に回したくないと思わせたらいいのかもしれないけど、それまではポッサムさんも全面的に信頼するわけにはいかないな。でもとりあえず土地の件は承諾もらったんだ。あとはその環境を作ればいい。」


俺はキリーエと共に人の雇用や確保する土地について話をした。


雇用する人については『アウローラ』とも話をする必要があるが、この間の作戦で亡くなった傭兵の家族に最初に話をする予定だ。


収入がなくなってしまった人に安心して給金をもらえる仕事を提供すればこちらの事を裏切ったりはしないだろう。

情に訴える事にはなるけど、普通に全く接点のない人を雇うよりは数倍いいだろう。


それに‥

俺がもう少し早く戦場に着いていれば助かった命があったかもしれないと思うと何かしたくなってしまったってのが本音だけれども。


案の定クワイスにその話をしたら、すぐにでも遺族と話をすると言ってくれた。


よし少しずつだが、形になってきたな。

待ってろよナイコビ商会。


すぐそばにいる俺たちに手出ししたくなる環境を作ってやるぞ。

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