第317話

人も雇用する必要があるが、まずは海苔を作る場所が必要になる。


そのため、エッケンさんが紹介状を書いてくれた宛先の人に会いにいく事にした。


ロンギル共和国はいくつかの国が集まって成り立っているが、その中の5つの領土を管理しているそれぞれの領主が任期ごとに代表を行っている。


港町セイルズを含め、ロンギル共和国南方にあるカルーン領土を治めている領主もその中の1人である。


現在は代表はしていないものの、ロンギル共和国内では大きな権力を持ち、港町の収益にてこの国で1、2を争う発言力を持っている。


そのカルーンの領主にて代表時は宰相、任期外の時は領主補佐をしている人がエッケンさんが紹介状を書いてくれた人だった。


面会の約束をするべく街を移動する事になるかと思っていたら、なんと都合よく港町に来ているとの事。


なんでもカルーン領土の中で収益の半分以上を占めているセイルズで、任期外の時は1年の半分以上を過ごしているらしい。


さっそく面会の申し出を行うために領主館に伺う。


領主館の中に入ると、受付の人と年配の男性が話をしているところだった。


年配の人は受付の女性と楽しそうに会話している。


邪魔しては悪いので少し待つ事にした。

まあ急ぎはしていないし、女性との会話を邪魔するものではない。

だって俺だったら邪魔されたくないもん。


少し待っていると年配の男性の方が気づいて声をかけてきた。


「おお。すいません。領主館に御用でしたかな?申し訳ない。どうぞどうぞ。」


「すいません。せっかくお話されていたのに邪魔してしまいまして。ありがとうございます。」


「おお!紳士ですな。女性との会話の大事さをわかってらっしゃる。」


「いえ、そんな大層な事じゃありません。自分だったら女性と楽しい会話をしている時に話しかけられたくない。そんな自分がされたくない事を人にしたくなかっただけです。」


「ふむ。貴方は素晴らしい紳士のようだ。まだお若いというのに。」


「いえ、私などまだまだ若輩者です。貴方のような女性を楽しませる話術、人を惹きつける声の抑揚、柔らかな物腰など見習わさせていただく事が多々ありますので。」


俺たちはそのまま目で通じ合った。

紳士として‥


「はぁ‥マルコイさん、何してるん‥アキーエちゃんいなくてよかったな。」


うっ!

いかん紳士スマイルが少し崩れてしまった。


「ポッサム様申し訳ありません。仕事の邪魔になりますので避けてもらっていいでしょうか?そちらの方申し訳ありません。此方は領主館になりますが、どのようなご用件でしょうか?」


ポッサム?

この素晴らしい紳士がポッサムさんなのか。


「申し訳ありません。私は獣人国からやって参りまして、獣人国の宰相であられるエッケン様よりポッサム様宛の紹介状を持って参りました。お渡ししていただければと思い領主館を訪ねたところでした。」


俺はポッサムの方を見る‥


お?

紳士涙目になってるけど‥


あ!

もしかして受付の人から邪魔って言われたのに心折れたのか?

わかる‥


俺もよくアキーエに白い目で見られるからな。

紳士なのに‥


「エッケン殿か。久しいな。私がポッサムと申す。その手紙お預かりしても?」


立ち直りは早い。

さすが紳士だ。


俺は頷き紹介状をポッサムに渡す。


ポッサムはその場で紹介状を開ける。

そして紹介状の中身に目を通す。

時折驚いたように目を見開いたりしているのがわかった。


しばらくそのまま待っているとポッサムは読み終えたのか、また元の封筒に手紙を入れる。


「なるほどなるほど。貴方とそのお仲間はかなり愉快な方達のようだ。それで、今日はこの手紙を持ってこられただけですか?何か私に頼みたい事、もしくは取引のような物があってこられたのではないでしょうか?」


さすがにこの国を任期ごととはいえ支えている人だな。

しかしだったら話が早い。


俺たちはさっそく海苔の作成について話を始める事にした。

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