第316話

「ところでキリーエ。この街での特産品についでなんだけど。」


俺は料理の後片付けをしながらキリーエに話しかける。

そして振り向いたら目の前にキリーエがいた。


さっきまで向こうのテーブルでフライ食べてたはずなんだけどな〜。


俺『スクレイプ』使った覚えないんだけど‥


そして譲渡でスキル【縮地】を譲渡した覚えもないぞ。

多分‥


「あ、あのな。今も少しは食べられているかも知れないんだけど、海苔を作ってみないか?」


「海苔?あの海藻みたいなやつのこと?でもあれって流木やったり岩に引っ付いてるやつを乾燥させて食べてるんやろ?あれを作るってどうするん?流木をたくさん集めて来るとか?」


それはそれで面白い。

俺が『スクレイプ』使って漂ってる流木を集める1箇所に集めるとか。


「でもそれだと自然に漂ってる海苔を集める事になるから作るとは言えないぞ。そうじゃなくて集めてみて、くっついてるかどうかなんて運じゃなくて、意図的に作るって事だ。海苔の元となる胞子嚢ってやつを網に付着させて葉状体を育ててそれを収穫するんだ。海苔の元になる胞子嚢ってのは貝の中にある。だからそれをこちらで貝の殻で育てて人工的に海苔を作るってわけだ。」


「なるほど‥それでどうやって食べるん?乾燥して食べるん?あれってそのまま乾燥させるからゴミとかも結構つくやろ?」


「一旦細かく切って洗った後にまた四角にするんだよ。そして乾燥させた後に焼き入れして焼き海苔を作る。焼く工程の中で味をつけたりする事で味海苔とかも作る事が出来るぞ。この街もホット商会のおかげで米が浸透してきたけど、この海苔ってのは米にめちゃくちゃ合うみたいだぞ。」


するとキリーエの目がキラリと光った。


「米に合うん?それは是非ともホット商会で作るしかないね。実は早い段階でホット商会全体をまかなう米を作るのにあの村だけじゃ間に合わなくて数カ所契約して同じように作ってもらってるんよ。多分もう収穫になるんやけど、結構な量やから米を売るってとこまで行けそうなんよね。そしたら家で食べれる米に海苔をつけて食べる事ができる。」


え?

もう収穫ってどれだけ早い段階で依頼かけてたわけ?

先見の明がすごいんだけど‥


「そ、そうだな。米と海苔を普及させたら米の市場はホット商会で独占だ。米は作り方真似できるかも知れないけど、海苔は知識がないと難しいだろうからな。」


少し期間がかかる事なのでナイコビ商会に対するプレッシャーにはならないかもしれない。

でも自分が邪魔だと思ってる商会が人を雇って何かしだしたら気になってしょうがないだろ。


「キリーエに頼みたいのは海辺の一画の買い取りと海苔を作る人の雇用かな。要所要所の大事なところは信頼できる人に任せた方がいいだろうけど、それ以外の工程は仕事できる人なら誰でもいい。それこそナイコビ商会の息がかかった人でもな。そこに信頼できる人を1人入れておいて炙り出すのもいいかもしれないしな。」


「ほぁ〜‥マルコイさんがそこまで考えてくれてるとは。」


「あとナイコビ商会が何かしてくるかもしれないから、そこも『アウローラ』に巡視してもらった方がいいだろ。」


俺たちは今からやる事をまとめて動き出した。


「それじゃあ海辺の買い取りやけど、共和国にお願いする事になるんよね。ホット商会で登城の予定立てる必要があるね。」


「そうだが、一応エッケンさんに紹介状をもらってるから、それを活用させてもらおう。エッケンさんがくれるくらいだから、多分この国でも重要な役職してる人だろ。せっかく書いてもらったんだ。活用させてもらおう。」


エッケンさんには紹介状を書いてもらう時に襲撃の件は伏せてもらうようにした。

もしナイコビ商会とやりあう時に共和国の人に協力してもらったら何かあったらエッケンさんにまで迷惑かけるかもしれないからな。


さて少し大きな仕事だ。

頑張ってみますかね。

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