第315話

新しい料理を試すために先日訪れた店とは違う店に来た。


なのに何故か物凄く期待した目で見つめて来る美人さんが目の前にいる‥

しかも物凄く近い‥


「あのぅ‥そんなに近くで見られると作業がやりにくいんですけど‥」


「ああ!すいません。一挙手一投足見逃したくなかったんです!」


美人さんはこの店で料理人をしているフーラさんで厨房を貸してほしいとキリーエが伝えたらこうなった。


しかし今から料理するのに顔が30センチくらい前にあるってどうなの?

その綺麗な顔切れちゃうよ。

まったく。


「それじゃあ今回作る料理は白身の魚とエビを使ったフライを作る。これについては肉でも美味しくできるけど、この街の料理となると美味しい魚介類だと思うからね。必要なのはフライにする魚介類と小麦の粉、牛の乳、あとは卵。そして1番大事なのが‥」


俺は買ってきた袋から大きめのパンを出す。


「パンだ。」


「パン?それをどうするん?付け合わせとかにするん?」


「いや、このパンを一旦削ってパンの粉にするんだ。それを衣にして揚げるとサクサクした食感の料理になるんだよ。」


おお。

もの凄いスピードでフーラさんがメモをとっている。

いや、隣でキリーエもメモしていた。

チラッと見たが、値段やら仕入れ先などが書いてあった。


あ、相変わらず仕事が早いですね‥


「さっき言った魚介類は下処理してから小麦の粉、牛の乳、卵を混ぜた物に潜らせる。そしてさっきのパンの粉をつけて油で揚げるんだ。」


俺は黄金色に揚がったエビを一旦別の皿にあげる。


「工程は簡単だろ?でも奥が深いみたいで、サクサクした食感のためにパンの粉を工夫したり色々と出来ると思うぞ。」


うおっ!


フーラさん、なぜ拝んでいるの‥?


そこに神様はいませんよ。


「素晴らしい!さすが大先生!いや、神先生!この素晴らしい料理を私が作ってもよろしいのですか?」


「いや、この店で出してもらうために来たんだから、出してもらわないとこっちが困るんだけど‥」


「おお‥ありがたい‥」


う〜ん‥

この人もだいぶきてるな‥

綺麗なのに残念な人みたいだ‥


「ここですぅ!」


大きな声がしたので、店の入り口を見るとミミウが仁王立ちしていた。


「ここにマルコイさんが作った料理の匂いがしますぅ!」


え?


なにそれ?

ま、まさか匂いでここまで来たの?


新しい料理を作るのにミミウがいないからどうしようかと思ったけど、探すのも大変だったから後で作ってやろうと思ってたんだけど‥


まさか自分で探して辿り着くとは思わなかった‥


「あっ!マルコイさんですぅ!という事はやっぱりここで新しい料理を作ってるですね!ミミウも食べたいですぅ!」


「お、おう。わかった。今作り始めた所だし材料は後でミミウにも作ってやろうと思って大量に買ってあるから大丈夫だぞ。し、しかしよくここがわかったな。屋台の所から匂いを探してやってきたのか?」


「まさかそこまでは無理ですよぉ!屋台を回ってお腹が空いたのでご飯を食べに近くまで来たら匂った事がない美味しい食べ物の匂いがしたからマルコイさんがいるんじゃないかと思って来ただけですよぉ。」


なるほどなるほど。


それなら普通の人でも‥


いや、やっぱりミミウじゃないと無理な気がする‥


ミミウの食事に対しての特殊能力が凄すぎるな‥

実はスキル【ご飯察知】なんてのを持ってたりするんじゃないだろうか‥


キリーエと一緒に後でギルドカードを確認した方がいいのかもしれない‥


その後フライ揚げ人となった俺はキリーエやフーラさんミミウのためにフライを揚げまくった。

主にミミウのためだったけど‥


新しい料理についてはこれでいいかとキリーエに確認しようとしたら、フーラさんに仕入れ先やら値段やらを伝えていたので問題なさそうだ。


それじゃあ次は特産品についてだな‥

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