第313話

「あくまでナイコビ商会というか『カッカス』がやっただろう‥なんだな。」


「そうだな‥はっきりと断定は出来ていない。目撃者もいないからな。」


獣人国までやってきた襲撃者はそこまで強くなかったし、自分の存在を隠そうともしていなかった。

送り込んで来た先が違ったのか、それともあえてあの程度の者を寄越して警戒させるのが狙いだったのか?

でも会話した感じでは、明らかに暗殺目的で来ていた。


どちらにしろ仲間を狙った事には変わりない。

絶対に指示を出した奴は探し出す。


しかし‥


「それだと『カッカス』に乗り込む訳にもいかないな‥」


う〜む。

もどかしい‥


しかし証拠もなく乗り込んでしまったら下手したらこちらが悪者である。


何か1つでもきっかけがあれば、それを元にいちゃもんつけて揉め事に持っていけるのだが‥


しかし考え方が完全にチンピラだな。


「すまない。俺たちも雇い主に聞いたりしてはいたんだが、やはり暗殺者がどこの者かはわからない状態だ。だからうちとしても警戒は最大限にしているが、それをネタに詰め寄ることはできないんだ。せめて何か火種があるといいんだが‥しかし今の俺達では火種があったら困る状況ではあるんだがな。そんな事になったら本当に君達に頼る事になってしまう。」


それは別に構わない。

もともとそれが目的でここまで来たんだからな。

しかしそれは相手が本当に『カッカス』だったらという条件が必要になる。


「わかった情報助かったよ。あとホット商会としての相談があるんだが‥」


ホット商会の件についてはキリーエと交代する。

商会の会長と形はなってますが、正直この街に何軒ホット商会の店があるのか知りませんからね!


しばらくすると話もまとまったようで、明日から『アウローラ』がホット商会を巡視してくれるそうだ。


現状の『アウローラ』ではそんな事をしてられないんじゃないかとも思ったが、先立つ物はお金との事。


今まで通り諜報活動は行なっていくが、今の人数では大きな依頼は受ける事が出来ないためキリーエからの依頼は少人数で行えるのでとても助かるとの事だった。


ただ依頼を受ける条件として、もし大きな依頼や『カッカス』との揉め事なんかは俺たちが協力する事を求めてきた。

俺としては揉めたいけど揉めれない相手なので、その要望は願ったり叶ったりだったので即承諾した。


火種を作るためにこっちから絡むって手もあるが、ここ数年で作り上げてきた『カッカス』のイメージはかなり高い。


下手にこっちから絡んでしまうと完全に悪役になる。


俺たちはそれでも構わないが、下手に『アウローラ』に関わってしまった今となっては『アウローラ』の立場がまずい事になる。


八方塞がりだな‥


しょうがないスキャンや『アウローラ』からの情報を待つしかないか‥


クワイスとの話も終わり一旦宿に帰る事にした。


とりあえず有用な情報や『カッカス』が仕掛けてくるまで待機する事にするか‥






次の日からは各自自由行動をとった。

もちろんキリーエの護衛は俺とアキーエ、ミミウで持ち回りでする事にした。


今日は俺がキリーエの護衛だ。


キリーエは精力的に商いに力を入れた。

鰻丼もそうだが、新商品の開発を更に行う事にしたのだ。


「そんなに焦らずにいいんじゃないのか?鰻丼だって作ったばかりでまだ料理として浸透してないのに?」


「そやね。でもここでホット商会をもっと有名にする事ができたら、ナイコビ商会もホット商会に対して本腰入れて来るやろ?そうしたら動きがあるかもしれんからね?」


そうか。

確かにそうだな。

それじゃあ俺も新商品に力を入れるとするか。


そしたら料理だけじゃなくて魔道具とかもいいかもしれない。


よし。

ちょっと本気で目立つためにいろいろやってみるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る