第312話
お腹もいっぱいになったところで『アウローラ』の拠点に向かう事にした。
拠点は昨日より少しは落ち着いたようだが、まだ団員たちは走り回っているようだった。
傷が深かくても息がある者は助かったが、すでに命を落としていた者はいた。
命はポーションで戻すことはできない。
駆け回っている団員たちの表情もくら‥くないな。
「おい!結局第2師団で生き残ってるのは何人だ?」
「第2師団は5人くらいじゃないのか?今回の戦いで結局全体で半分以下になっちまったからな!」
「それじゃあ師団は全部合わせた方がいいんじゃないか?」
「間違いないな!また1からになるな!」
「ああ!でも死んだやつらの分も頑張らないとな。」
落ち込んでいる表情は誰一人見られない。
傭兵団を長くやっているんだ。
こんな事は一度や二度じゃないのかもしれないな‥
今回の作戦は最悪全滅する可能性もあった。
実際にかなりの人数が亡くなっている。
しかし誰一人下を向いている人はいない。
これからの事を皆んな考えているんだろうな。
アレカンドロの案内で団長室に着く。
扉をノックする。
「アレカンドロです。マルコイ殿たちをお連れしました。」
「入ってくれ。」
中からクワイスの声が聞こえた。
団長室に入る。
「よく来てくれた。ごちゃごちゃしているけど、適当なところに座ってくれ。」
俺たちは思い思いの場所に座る。
「さて本題に入るとするか。それじゃあ何から話せばいい?」
「そうだな。アレカンドロには伝えていたんだが、俺たちがロンギル共和国に来た理由から掻い摘んで話す。まずは仲間のキリーエが狙われた事が発端だ。」
俺はキリーエの方を見る。
「俺たちはキリーエを中心にホット商会って商会をやっている。獣人国やエルフェノス王国に出店しているんだが、少し前にロンギル共和国にも出店しており売り上げも好調だった。ただロンギルに出店したあたりからキリーエを狙う奴が襲ってきてな。もちろん返り討ちにしてやった。誰かはわからんが、出る杭を打つつもりだったんだろうけどな。でも残念ながらうちの仲間は気持ちも強くてな。こちらを打つつもりなら打ち返してやろうって話になったんだ。それで色々と話を聞いたらナイコビ商会が怪しいってことになった。まあ時期的にもロンギルに出店してからだったしな。それでこっちまでやって来たんだ。」
クワイスは俺の話を黙って聞いていた。
そして俺の話が一区切りついたところで口を開く。
「そうだな。おそらく犯人はナイコビ商会だろう。ナイコビ商会はこの国の商いをすべて掌握しようとしている。そんな中に他所から来た商会が国でデカくなるのを許すようなやつらじゃない。俺は商人じゃないから詳しい事はわからないが、商いは競い合わなくなれば衰退していくと思うのだが、そんな事ナイコビ商会は関係なしだ。今までこの国で3人の商人のトップが暗殺される事件があっている。表向きは病死って事になってるけどな。そのどれもがこの国で一二を争う豪商だった。」
やはりナイコビ商会で当たりなのか‥?
「しかしそのどれもが確固たる証拠がなくてな。だが商会の頭が死んですぐにその商会はナイコビ商会に吸収合併されている。ただあんまり派手にやり過ぎてな、国にも注視されているようでそれ以降は慎重になったのか暗殺なんかはあっていない。しかし国外になると遠慮なく動いているようだな。」
しかしここでもナイコビ商会で間違いないだろう、か‥
国内でも確証がないのであればどう手を出していいのやら‥
「『カッカス』には通常の部隊以外に裏で動いている部隊がある。おそらくその部隊が君達を狙ったんだろうな。」
なるほど。
しかし裏で動いている部隊を表に出す手段がな‥
いきなり拠点をぶっ叩くってわけにもいかないだろうしな‥
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