第311話

ミミウのおかわりも済んで一息ついた。

ちなみにミミウはよほど鰻丼が気に入ったのか、10杯おかわりした。

もちろん下処理した鰻が足らずに俺とウナーギさん‥間違えたウノーギさんで大急ぎで追加分を作る羽目になった。


しかしそのおかげでウノーギさんは鰻の捌き方や味付けの仕方を覚えてもらう事ができた。


キリーエの話ではすぐにでもこの米処の目玉として売り出すらしい。

すでに店舗を増やす話をしていたから気が早いんじゃ?と言ったら、すぐに出す事になるから今からで大丈夫なんだそうだ。


「マルコイさん‥」


ミミウが神妙な顔で話しかけてきた。


「どうしたミミウ?」


「あのぅ‥さっきミミウが買った出店のおばさんなんですけど、たくさん買ったからって一本おまけしてくれたんですぅ。いい人だったけど、この鰻売る事になったらもうあの串焼き売れなくなるですか?」


確かにそうだな‥


しかしミミウは優しい娘だな。

優しくしてくれた人や恩を忘れない。


「キリーエ。屋台の鰻の串焼き屋ってどうにかする事できるか?一応鰻丼のヒントをくれた人だし、ミミウに一本おまけしてくれたらしい。できれば何とかしてやりたい。」


「そうやね。ホット商会に入ってもらって蒲焼き売ってもらう?納金は売れ行きが良くなるまで半年くらいは無料でええよ。多分1ヶ月で今までの3倍くらいになるとは思うけど。」


そうだな‥

同じ商品ってのも面白くないし‥


「屋台で売ってもらうのは白焼きにしよう。下処理は一緒だけど焼くときは塩のみで焼くんだ。蒲焼きは米と一緒じゃないと喉が乾くしベタつくだろ?白焼きだったら気軽に食べれるし。」


「それってどうなん?美味しいん?」


うむ。

キリーエの目がキラキラしている‥

瞳の中に金貨が写ってるように見える‥

いやいや気のせいだ。

と思いたい‥


「そうだな。少し材料も余ってるから作ってみるか。」


「やったですぅ!」


ミミウさん‥

さっき鰻丼大量に食べた気がするんですけど‥


俺は余っていた鰻を塩だけで焼く。

すぐに焼けたのでみんなに食べてもらう。


「うわっ!これはこれでめっちゃ美味しいわね。」


「これなら何本でも食べれるですぅ!」


俺も食べてみる。

うん、白焼きも美味しいな。

塩だけだが、鰻の旨味を充分すぎるほど感じられる。

キリーエは‥


「これならタレ要らずで屋台でも売れる‥米処との市場のすみ分けもできて売り上げ3倍?いや5倍は‥」


うん。

大丈夫みたいですね‥


「どうだミミウ?これなら屋台のおばちゃんも大丈夫だろ?ただ無理強いはするなよ。もしかしたらどこかの商会に入っているかもしれないしな。」


「わかったですぅ!さっそく行ってくるですぅ!」


駆け出して行くミミウ。


「ミミウちゃん!ちょっと待ってーな。うちも行かんと話ができんよ!」


「ちょっとキリーエ!1人で行ったら危ないわよ!」


「じ、じ、自分も行ってくるであります!」


アレカンドロは行かなくてもいいような‥


4人ともいっぺんに出て行ったので、俺はウノーギさんと世間話をする羽目になった‥






しばらくするとみんな一緒に戻ってきた。


「マルコイさん!おばちゃん鰻売ってくれるって言ってくれたですぅ!」


ふむ。

今も鰻は売っていると思うが‥

俺はキリーエを見る。


「串焼きのおばちゃんはどこの商会にも入ってなかったからホット商会に入ってもらったわ。でも何があるかわからんから、しばらくはホット商会の表示はしてもらわない事にしたんよ。ロンギル商会の件が落ち着いたら表示してもらった方がええかなと思って。」


それは良かった。

ミミウも満足そうだ。


しかしホット商会の表示の件か‥


「そうだな。確かに表示の件はしばらくしてからがいいかもな。今後向こうの出方次第では何かされるかもしれないからな。」


「うちもそう思ってる。そやからこの米処や他の街に出してる店もしばらくは傭兵団に頼んで護衛してもらう予定や。ここは『アウローラ』お願いしようと思ってるんよ。」


そうだな。

今後の出方か‥


みんなで楽しくしている事が俺にとっての幸せだと思う。

それを壊そうとしているやつはそれ相応の報いを受けてもらわないとな‥


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