第310話
「マルコイさん!買ってきたよ!」
キリーエが新鮮な鰻を買ってきた。
どうしても自分で買ってくると言って聞かなかったので、アキーエとアレカンドロの3人で買いに行った。
君たち3人妙に仲がいいね‥
「マルコイ!この鰻って魚、もの凄いヌルヌルするんだよ!知ってた?」
嬉しそうにアキーエが買ってきた鰻を見せてくれた。
もちろん手掴みではなく、ザルのようなものに入れてあった。
「お店の人が持ってみろなんて言うから持ってみたら手から逃げていったのよ!もう捕まえるの大変で大慌てだったわよ!」
大慌てなんて言いながらとても嬉しそうだな。
俺も行けばよかったかな‥
そんな事を考えながら鰻を受け取って、ザルから鰻を取ろうとしたら鰻が俺の手から逃げ出した。
逃げ出した鰻を捕まえるのに、借りた厨房でもキャッキャウフフしてしまった。
うん。
スリットからチラチラ見えるアキーエの太ももが‥
と見つめていたらアキーエと、いつの間にか兜を脱いでいたアレカンドロに白い目をされてしまった‥
な、なぜアレカンドロまで‥?
お、お前は俺の味方じゃなかったのか‥
とりあえず気を取り直して鰻を捌く。
売ってある鰻だから泥抜きはしてあるよな。
鰻が暴れるので、今日はモンスターと戦う事もないだろうからエンチャント:氷を使って鰻の動きを鈍くする。
先の尖った鉄の棒を鰻の目に打つ。
首の根元から背骨まで縦に包丁を入れて、そこからお腹の皮を切らないように尻尾に向けて包丁を進める。
首の根元の背骨が切れるところまで包丁を入れて、背骨を外していく。
知識はあるが、実際にすると難しい‥
少し肉も削いでしまった。
まあこのくらいはご愛嬌だ。
頭と尾びれを落として3枚に切り分ける。
串を通してしばらく蒸す。
頭と骨を焼いて鍋に入れる。
キリーエから貰ったしょうゆと砂糖、酒、はちみつを入れる。
鍋のタレにとろみが出たところで鰻を焼く。
鰻をタレにつけて焼きタレにつけて焼きを繰り返す。
うん。
いい匂いがしてきたな。
周りを見ると、みんな生唾を飲み込んでいるようだった。
1人飲み込まずに垂れ流しているのがいるけど‥
しかし異世界の料理もかなり再現できるようになったな。
この蒲焼は出来れば、みりんってやつがあった方がいいみたいだけど、それ以外の物はほとんど揃える事ができるし代用できる。
でもこれってキリーエがいてくれるからなんだよな。
俺が思った事やスキル【異世界の知識】で得た物を形にしてくれているから。
俺たちが自由に楽しく生活するためにはキリーエという商人の存在はすでになくてはならないものになっている。
俺がこの国に乗り込んだのも、キリーエのためってのもあるが俺がこの日常を守りたかったからだろうな。
人数分の料理が出来たのでテーブルに置く。
「さて、これが本日の料理で鰻丼ってやつだ!熱いから気をつけて食べてくれ。」
「「はーい!」」
みんながっついて食べている。
俺も一口食べてみる。
少し甘みが強かったかな。
でもかなり美味しい。
食欲をそそる匂いもそうだが、何と言っても鰻が柔らかくできている。
ちゃんと骨も取ったから、ミミウが屋台で食べてたような骨が邪魔ってのもないな。
やっぱり異世界の料理は凄い!
「こ、こ、こ、これは美味しい!鰻という好き嫌いの激しい魚をここまで美味しく仕上げるとは‥やはり大先生!素晴らしい!」
いや、俺が考えた訳じゃないのでそこまで褒められるとムズムズする‥
「どうだキリーエ?店で出せそうか?」
俺はキリーエに声をかける。
「鰻は安価で手に入る‥砂糖が多少値が張るけど、はちみつの量を増やせばいけるんやないかな‥いやここは‥」
うん。
すでに店に出す方で考えているようですね‥
セイルズらしい新しい料理の完成かな?
ミミウ‥
空になったどんぶりを涙目で見つめなくても、ちゃんとおかわり用意してますよ‥
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