上位個体のほとんどを討伐した後にアキーエが駆け寄ってきた。

「マルコイ！さっき何したの？オークキングがマルコイの方に引き寄せられたように見えたけど。」

「正解！スキル【空間魔法】のレベルが上がって使えるようになった魔法なんだけど、『スクレイプ』って言ってな。空間を削り取る魔法なんだよ。空間を削り取る事で削り取った部分を他の空間が補おうとして周りの空間を引っ張るんだ。それで近くにいたオークキングを引っ張ったってわけさ。」

「空間を削り取る？変な魔法ね。」

「何を言うんだね！」

俺はビシッとアキーエを指さす。

「これは異世界から得た知識でかなり有用な魔法なんだぞ！」

俺は上半身を反らしながらアキーエに言う！

異世界の知識で得た完璧なポーズだ。

「はいはい。確かにすごかったわよ。おかけでオークキングも倒す事ができたんだしね。」

アキーエはそう言うとキリーエの方に歩いて行った。

むう‥

男のロマンが‥

ふと視線を感じて振り向くとミミウが同じポーズで立っていた。

ミミウ‥

君が知っているのはロマンではなくてマロンだよ。

俺たちはオーク討伐で散っていた傭兵団の人たちが戻ってきたのを見て傭兵団の人たちに近づく。

「マルコイ殿！」

アレカンドロがいきなり抱きついてきた。

美人に抱きつかれるのは嬉しいがデカいし鎧が痛い‥

「んなっ！アレカンドロ！一旦落ち着きなさい！ちゃんと離れて話しましょう！」

アキーエが急いでアレカンドロを引き剥がしてくれた。

物すごいパワーだった。

鎧も痛かったし、あと少し遅かったらエンチャント:水で回復する必要があったぞ‥

すると1人の男性が近づいてきた。

濃い紫色の髪を後ろで束ねている狼の耳を持った40歳くらいの男性だ。

「うちのアレカンドロが申し訳ない。俺は傭兵団『アウローラ』の団長でクワイスと言う。助けてもらってすまなかった。君が来てくれていなかったらおそらく俺達は全滅していただろう。団を代表して礼を言わせてもらう。」

この人がアレカンドロのいる傭兵団の団長さんか。

素直に感謝を伝える事ができる人なんだな。

表情からも本当に感謝していることが伝わってくる。

「いや、俺たちはアレカンドロに用事があってきただけだ。しかしどうもただ事じゃない様子だったからな。助ける事ができて本当によかったよ。」

「ああ。残念ながらかなりの団員が命を落としたがそれでも多くが助かった。本当にありがとう。」

「本当だよなっ！団長の言う通りだ。お前たちが来てくれてなかったら全滅してたところだ。天使が目の前まで来たのは初めてだったぜ。」

「そうだな。メンセンの言う通りだ。助かった人がいて本当によかった‥‥‥メ、メンセン！？お、お前生きてたのか？」

突然出てきた丸坊主の筋骨隆々の男性にクワイスは驚いた声を上げる。

「いや〜団長。本気で死にかけてたよ。でも綺麗な姉ちゃんがやってきて重症を負ってたやつらにポーションをかけてくれたんだ。そしたらなんと死にかけてたやつも大体息を吹き返しやがった。ありゃ相当高いポーションだぜ。大盤振る舞いしてもらってるけど、うちの団で払えるような金額の物じゃなかったっぽいぜ。大丈夫なのか？」

するとクワイスは驚きの表情のままこっちを見る。

顔が固まってるみたいで中々面白いぞ。

キリーエが重症を負っている人たちにポーションを使用しているみたいだな。

「困った時はお互い様だ、気にしなくていいよ。ただその代わりと言ってはなんだが‥」

クワイスが何を言われるのか緊張した面持ちでこちらを見ている。

「別に大した事じゃない。ちょっと教えてほしいことがあるだけだ。ナイコビ商会の事、傭兵団『カッカス』の事、あとはセイルズの美味しいご飯を出してくれる宿かな。」

クワイスは何を言われたのか理解できないのか口を開けてポカンとした表情でこちらを見ている。

表情豊かだなこの人。