第296話

アレカンドロは目の前で起こっていることが信じられないでいた。


オーク討伐に挑んだ自分達は予想外の事態に直面して全滅寸前だった。


そこに突然獣人国にいるはずの自分が尊敬している人が現れたのだ。


はっきり言って頭が混乱している。


「ア、アレカンドロ‥あの人たちは?」


「クワイス団長‥あの人達は自分が獣人国にいた時にお世話になった人達です‥」


「それじゃあお前が挑んだって言う闘技会を優勝した人か?」


「はい。マルコイ殿とその仲間であるアキーエ殿とミミウ殿です‥」


クワイスも目の前で起こってる事に驚きを隠せないでいた。


突然空から現れた男に、強大な魔法を使う格闘士、大きな盾とそれに負けない大きさの槍を使いオークを討伐する異様な出で立ちの少女‥


自分達が追い詰められて死を覚悟した相手を次々と駆逐している。


「あ、あれには勝てんだろ‥」


「はい!自分が初めて勝てないと思った人達ですから!」


アレカンドロは笑みを浮かべる。


まだ窮地であることは変わりないが、先程までとは違い笑みを浮かべる余裕がある。

クワイスは団員達に檄を飛ばす。


「傭兵団アウローラよ!まだ動けるものはあの3人に続け!ただ邪魔にならないように動けよ!」


まだ動ける者達は頷くと3人に近づくオークを討伐し出した。




アレカンドロの仲間たちが動きだした。

少しは落ち着いたか?

あんまり無理はしてほしくないが、正直この数だ。

戦ってくれるだけ助かるな。


オークマジシャンもほぼ討伐できた。

しかしまだ上位個体はかなりの数がいる。

アレカンドロたちはなぜここまでの数に突っ込んだんだろう‥?

あきらかに勝てないと分かっていたはずだ。

最初は隠れていて途中で出てきた?


一瞬そんな考えが頭に浮かんだが、すぐに消し去る。


モンスターは本能に忠実だ。

それはおそらくどこかにいると思われるオークキングにも抑え込む事はできないはず。


だとしたらなぜ?


いや、今はそんな事を考えている暇はないな。


後でアレカンドロたちに話を聞くとしよう。


とりあえずは目の前のオークたちをどうにかしなければ。


目の前のオークに集中する。

数が多すぎて倒しても倒しても湧いて出てくる。


これまでモンスターの氾濫に何度か遭遇したが、ここまでの数と戦うのは初めてだな。


これオークキングが出てくるまで体力と魔力が持つか?

かっこよく参上したのはいいけど、ヤバくないかこれ?


とにかく上位個体を討伐しなくては。


そう思い周りを見渡す。


すると2箇所ほど、オークが吹っ飛んでいる箇所がある。


『穿て!火龍の咆哮!』


ドラゴンのブレスのような火魔法が辺りを焼き尽くす。


更にその奥にはデカいサイズの槍を装備した少女が周りのオークをぶっ飛ばしている。

そしてその周りで突然矢が刺さって絶命するオークがいる。目を凝らさないとわからないけどおそらく【遮断】を使っているキリーエだろう。

【察知】には反応がある。



あれ?


俺って1対1にはそこそこ自信があるけど、1対多数だとあんまり活躍できてない気がするんだけど‥


3人とも全力で戦っている。


俺も少し魔力は使うが、ペースアップするか!


決して地味だからではない‥


エンチャントを全て発動させて、エンチャント:氷を発現させる。


氷の結晶が身体の周りを浮遊する。


「傭兵団の人たち!オークの動きを遅くするから各自討伐してくれ!それと俺の周りにあまり近づきすぎないでくれ!」


俺は地面に手をつける。

俺の身体を中心に氷の波がオークたちに襲いかかる。

氷の波はオークの身体に触れると結晶化してオークの動きを阻害する。

俺がエンチャント:氷の発動をやめたとしても動けなくなるだろう。

しかし今回は念のためもう一度広範囲に氷の波を放つ。


二度の氷の波を受けたオークは絶命はしないが、生命活動を急激に低下させた。

上位個体もほぼ同じく動けないでいる。


傭兵団は動かなくなったオークたちを各々の武器で倒している。


よし、これでかなり前線を押し返したな。


す、少しは活躍できたかな‥

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