第287話

アレカンドロが傭兵団『アウローラ』に着いた頃、マルコイ達はエルフェノス王国の最北端にある街に着いていた。


「マルコイ。この街からロンギル共和国に船で行くのね。」


「そうだな。ここで一泊してから朝から船に乗ってロンギルに入るぞ。」


俺もそうだが、アキーエやミミウも田舎育ちで海をみた事がない。


国としては海に隣接しているのだが、わざわざ海を見に行くために国の端まで行くような事はない。


キリーエだけ父親の商売に付いて行った時に見たくらいだった。


さっそく海を見に行ってみた。


「うわぁ〜、凄いわね。」


「確かに凄いな、これって全部塩水なんだろ?」


俺とアキーエはその大きさに感動する。


「この海を船で渡る事になるぞ。海にはモンスターもいるらしい。小さい船だと襲われる事もあるらしいけど、大きい船だと大丈夫だってさ。多分自分より大きな物を襲わないからだろうって事らしい。」


「そっか。でも船の上だと戦いようがないから襲われたらひとたまりもないわね。」


確かにそうだな。

陸の上だと足場があるから大丈夫だけど、海の上だと船の上で戦う必要がある。


まあ襲われる事はないって事だから大丈夫かな。


その日は街の宿に泊まった。

宿では海で取れる魚などがメインの食材だった。

異世界の知識で色々と魚を使ったメニューがあったが、鮮度などの問題でホット商会で扱えそうな物はなかった。

干物なんかはもともとあるしな。


ただ、イカと蛸は気持ち悪いからって理由で食べられてなかったからイカを大量買いして『スペース』の中で干す事にした。


お酒のつまみとして食べるつもりだったけど、キリーエが興味津々だった。


今日は食べれないけど、後からキリーエに食べさせたら港町のイカを買い占めるかもしれない‥


もうすでに漁に出ていた船の人にイカを破棄せずにとって置いてもらうように交渉していた。


確かにただ同然のものが美味しくなるならいいんだろうけど、見た目が気持ち悪いから売れるかどうか‥


でもたこ焼きの件もあったからキリーエなら上手く売るんだろうな。


次の日は朝から船着場に行きロンギル共和国行きの船に乗る。


「これで明日にはロンギル共和国に着くぞ。特にする事もないだろうから着くまでゆっくりとしとこう。」


船はロンギル共和国に向けて出発する。


しばらく船から海を見ていた。

海を見ると何故か気持ちが落ち着く。


「船って凄いわね。これだけの人数を乗せても沈まないんだから。」


アキーエとミミウが隣にやってきた。


「そうだな。多分50人くらい乗ってるよな。まあ沈むようなら商売にならないんだろうけど、最初に船で大陸を渡ろうって思った人がいた事に感動するよ。」


「そうね。でも海も塩水とかじゃなくて甘かったりするとよかったのにね。」


うーん、ベトベトしそうだな‥


「これだけの水が甘かったらいくら飲んでもいいからミミウはずっとこの街に住んで海を飲むですぅ!」


いや、ミミウだったら半年もあれば全部飲みそうな気がするのは俺だけだろうか‥



そんな馬鹿な話をしたり甲板で魚釣りをしたりして船旅を楽しんだ。


ミミウが自分よりも大きな魚を釣った時には焦ったが。

だってミミウが釣り竿ごと連れていかれるかと思ったからな。

でもミミウは持ち前のパワーで100kgはありそうな魚を簡単に釣り上げてたけど‥




夕刻になり客室で休んでいると急に甲板辺りが騒がしくなった。

いろんな人が廊下を走ったりしている。

甲板からは叫び声も聞こえている。


何事かと客室から顔を出し、走っている船員さんに話かける。


「どうしたんですか?」


「す、す、すいません!まだはっきりとわかってないのですが、どうやらモンスターが船に迫ってきているそうです!た、ただこの船はあ、あんぜんですので客室でお待ちください!」


おいおい。

完璧に安全じゃないっぽいんだけど‥


「モンスターって?」


「ク、クラーケンと呼ばれるイカの化け物です!」


ええ〜‥

イカを干物にした逆襲ですか‥?

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