第285話
その絶望は後方に下がっていた遠距離部隊に襲い掛かった。
突然の襲撃に対応出来ずに一方的に蹂躙される仲間達がそこにいた。
クワイスは原因を考える前にすぐに指示を出す。
「近距離部隊はすぐに後方に回れ!遠距離部隊を囲むように移動しろ!崖を背にできるよう位置どりを行え!」
部隊後方で起こっている惨劇に呆然としていた傭兵達はクワイスの声ですぐに行動を始める。
剣士や盾士達がすぐに移動し陣形をとるが少なくない被害が出ている。
クワイスもすぐに移動してオークの群れを駆逐する。
(数が多すぎる‥)
クワイスは戦況を見ながら考える。
(オーク単体はアウローラの仲間であれば一人で2、3匹は討伐出来る。しかしこれだけの数でこられたら押し潰されるのも時間の問題だ。)
クワイスは一体これほどのオークがなぜ突然現れたのか理由がわからないでいた。
出てくるきっかけは先程のオーク上位個体の咆哮ではないかと思われる。
しかしどこから現れたのかが検討がつかないでいた。
「アレカンドロとメンセンはどうなってる?上位個体は討伐できたのか?」
「戦況的にはこちらが有利です!おそらくもうじき討伐できるかと思われます!」
クワイスはオークを呼んだ上位個体を討伐する事でオーク達の統率が乱れるのではないかと期待する。
「数名応援に行かせろ!崖側の集落にいたオークの討伐を急げ!」
この絶望の中、クワイスは団員が生き残る術を探すのであった。
アレカンドロはメンセンと共同して上位個体と思われるオークの討伐を行っていた。
上位個体はアレカンドロとメンセンより少し大きな体格をしていた。
アレカンドロ1人であれば多少梃子摺ったであろうがメンセンと2人であれば問題はない。
しかし先程から後方で上がっている叫び声や怒声が気になる。
早めに方をつけないとと思い攻撃が荒くなる。
大振りになった戦斧の攻撃をオークが棍棒で防ごうとする。
すると力を入れ過ぎていた戦斧は棍棒の一部を切り落としてそのまま地面に突き刺さる。
大きな隙を見せてしまった事でオークがここぞとばかりに棍棒を振り上げる。
しかしオークは腕を大剣で斬りつけられて、その棍棒を振り下ろすことは出来なかった。
「申し訳ないです!メンセン師団長!」
「構わん!それよりも後ろが気になる早々に片付けるぞ!」
「はい!」
メンセンが大剣を振り下ろす。
それをオークが棍棒で受け止める。
先程メンセンが斬りつけた場所を狙ってアレカンドロは戦斧をオークに叩きつけた。
するとオークの片腕が身体から切り離され、棍棒にぶら下がる。
そしてオークは片腕ではメンセンの大剣を防ぐことが出来ずにそのまま肩口に大剣を押し込まれる。
アレカンドロがオークの腹部を戦斧で斬りつけるとオークの力が抜けメンセンの大剣はオークの首を切り落とした。
「よし!アレカンドロ、すぐにクワイスのところに‥」
メンセンは視線を後方に向けるとそのまま止まった。
アレカンドロはメンセンの視線の先を見る。
視線の先には黒い塊と土煙があった。
よく目を凝らすとその黒い塊がオークの群れだとわかった。
「な、なんだよありゃ。あんな数のオークがいるなんて聞いてないぞ。」
横でメンセンが呟いている。
確かにこれほどの数のモンスターを見るのは初めてだった。
「モンスター氾濫の兆しどころか氾濫してしまってるじゃねーか。こんなもんうちの傭兵団だけでどうにかなるかよ!」
すると1人の男が此方に駆け寄ってくる。
クワイスだ。
「2人とも無事か。オークの上位個体はどうなっ‥‥そうか、上位個体を討伐しても勢いは止まらんか‥なら別の上位個体がいると思った方がいいだろうな‥」
「どういう事だ?」
「昔調べたんだが、モンスター氾濫は2種類あってな。1つは混合モンスターの襲来。これは魔王から直接命令があった場合とかだな。これは殲滅しないと決着しない。もう1つが同系モンスターの氾濫だ。これは統率している上位個体を討伐すれば収まる場合があるらしい。」
「なるほどな。しかし他の上位個体を探そうにもこの数は‥」
「そうだな。でも諦めるわけにはいかない。モンスターの数を少しでも減らして上位個体を探すしかあるまい。逃げ道もモンスターの後ろだしな。」
アレカンドロ達の絶望との戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます