第283話

「ところでクワイス団長!今回の作戦はどのような内容でしょうか!」


アレカンドロが鎧をガチャガチャいわせてクワイスに詰め寄る。

顔は綺麗なのだが、身体は大きくフルプレートを装備しているので違和感が凄い。


そんなアレカンドロに多少気圧されながらクワイスが答える。


「そ、そうだな。ここ港町セイルズの西にある荒野にモンスターの大量発生の兆しがある。主にオークと思われるがおそらく集落ができているのだろう。それを排除する予定だ。数が不明ではあるが、調査してうちの傭兵団でも充分対処できるようだ。だが数がはっきりとわかってない以上念のためにお前にも戻ってきてもらった。予定では2日後にここを出発する予定だからお前も準備するように。」


「承知いたしました!では自慢の戦斧を磨いて準備しておきます!」


アレカンドロは背中に収めていた戦斧を取り出し部屋の中で振り回し始めた。


クワイスはまたしても頭を抱えながら話を続ける。


「今回の作戦はナイコビ商会とも一旦休戦して討伐にあたる。ナイコビの子飼い傭兵団の『カッカス』も別の場所だが討伐作戦をするそうだ。まあ国が危ない時に内々で争ってる場合じゃないしな。だから今回はモンスター討伐に全力を注いでくれていいぞ。」


「承知いたしました!あと質問ですが、ナイコビ商会とはどこの商会でしょうか!」


そうだった。

こいつはこんなやつだった‥

そんな事を思いながらクワイスはアレカンドロに今のアウローラの置かれている状況の説明を始める。


「今までロンギルには大小様々な商会があったが、ここ最近それが減少している。それはナイコビ商会という商会が出来てからだ。ナイコビ商会は多くの商会を取り込み急成長した。強引に買い取ったり会長が亡くなった商会なんかを取り込んでいるんだが、その亡くなった商会についてはナイコビ商会が関わってるんじゃないかって噂になった。それを警戒した他の商会は連盟を組みナイコビ商会と対立する形となった。それに伴い商会が傭兵団を雇う事になったが、ナイコビ商会はさっき言った『カッカス』、連盟を組んだ方に雇われたのが俺達『アウローラ』だ。連盟の方にはいくつかの傭兵団が雇われたようだが、1番デカいのはうちだな。それと『カッカス』だが、こっちはナイコビ商会が大きくなり始めた時に出来た傭兵団で、ナイコビと最初から繋がってるんじゃないかって言われている。ここまではいいか?」


アレカンドロはしばらく考える素振りを見せて答える。


「はい!ナイコビが悪いやつかな〜って事はわかりました!」


クワイスはがっくりと頭を垂れる。


「そうだよな。やっぱりお前が理解するのは難しいよな‥まあいい。とにかくうちと『カッカス』が睨み合ってたけど、今回の作戦ではお互い手出ししないようにしましょうって事になったわけだ。」


「なるほど!とりあえずその『カッカス』とやらをぶっ飛ばすのはオークを倒してからって事ですね!」


「もうそれでいい‥わかったなら戦いの準備をしておけ。」


「承知しました!」


アレカンドロは鎧をガチャガチャいわせながら部屋を退出していった。


「もう少ししっかりしてたら頼れる存在なんだが‥まあ戦いになれば活躍してくれるだろうから問題ないか‥」


クワイスはアレカンドロが出て行った扉を見ながらそう呟いた。





2日後、傭兵団『アウローラ』は港町の西側にいた。

総勢70名程が集まっており、思い思いの装備をして待機している姿は圧巻である。

装備こそバラバラであるが、他国の騎士団に決して見劣りしない程の戦力を持っている。


アレカンドロはその傭兵団の中にいて自分の戦斧を手入れしていた。


「ようアレカンドロ。お前帰ってきてたんだな。」


アレカンドロに声をかけてきた男は髪の毛を刈り込み丸坊主にしている筋骨隆々の50歳くらいの男だった。

身体のサイズはアレカンドロより一回りほど大きい。


「おお!メンセン師団長お久しぶりです!」


「おう。しかし団長も気合入ってるな。数がわからんとはいえ、たかがオーク退治にお前まで帰って来させるとはな。」


「今日は自分の訓練の成果を見せる良い機会と思っております!」


「おうおう。そりゃ頑張ってくれ。」


すると1人の男が傭兵団の前に歩いてくる。


ざわつきが一瞬にして静かになる。


そして前に出た男クワイスが話を始めた。

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