第281話

「な、いつの間に買ったんだよアキーエ!」


「えへへ。マルコイがカッコ良く描いてあったから思わず買っちゃった。別にいいでしょ。それにこのタイプの木札はもう作らなくなるんでしょ?描かれてる人もマルコイっぽい人になるしアンバーエストって名前だけ残るみたいだし。だったら無くなる前に買っとかないと!」


むぅ‥

俺は元々かっこいいっての。


別にいいんだけど、すっごい恥ずかしいんだぞ。


「ぶわっはっはっは!これはもう少し‥いやだいぶ‥いやかなり眠そうな目にしないと似てない気がするぞ。しかしよかったじゃないか自画像がこんなにかっこよく残るなんてな!」


このおっさん絶対落とし穴に落としてやる。

俺の持ってるスキルフル活用して、ミミウの精霊にも協力してもらってから見た目では判断できないような凄い落とし穴作ってやるからな。


「ところで話は変わるが‥ぶほっ!‥すまない。お前達はなんでロンギルに行こうとしてるんだ?」


やっぱり落とし穴決定だな。


ロンギルに行く理由か‥


「それはうちの為です。」


キリーエがギバスに話しかけた。


「うちは王都からマルコイさんのパーティに入れてもらったキリーエって言います。マルコイさんとは一緒に商会をさせてもらったりしてお世話になってます。」


「マルコイが商会?そりゃ君にかなり迷惑かけてるんじゃないか?マルコイとか名ばかりだろうに‥」


正解!

うるさいわ!


「いえ、マルコイさんがおらんかったら、商会は成功してませんから。」


まあ俺は考えた事を伝えるだけで、それを形にしてくれるのがキリーエなんだけどな。


「でも商会が成功したのはいいんですけど、ちょっと目立ち過ぎたみたいで‥ロンギルからちょっかいだされてしまって。」


「そういう事だ。だからロンギルに直接行って話をつけてこようと思ってな。」


「思ってなってお前‥あの国は今きな臭くなってるぞ。別の事にも巻き込まれるんじゃないか?」


「そうだな。でも多分そのきな臭くしてるヤツがキリーエにちょっかい出してきてる当人みたいだからな。おそらく避けれないかなと思ってる。」


多分きな臭くなってるのはナイコビ商会の所為だと思う。

そして俺たちが相対しようとしてるのはナイコビ商会の子飼いと思われる暗殺ギルドだ。

どうしても何らかの形で敵対する事になるだろう。


「そうか‥気をつけるようにな。無事に帰りにまた村に寄るんだぞ。」


「当たり前だろ。おっさんを落とし穴に嵌めるために俺は村にまた来るぜ。」


そしてその後少し話をして、ギルドを後にする事にした。

ギルドの前でギバスさんとナーシャさんと別れる。


「それじゃあ明日には村を立つから。今度はロンギルからの帰り道で寄るよ。」


「そうか。わかった。あと言うのを忘れていたが、お前の兄がロンギルにいるかもしれん。傭兵業の方が金になるって言ってたから、もしかしたら向こうで会うかもな。」


「エルエス兄がロンギルにいるのか?」


俺は男爵家の三男で兄が2人いる。

1人は男爵家を継ぐアルサン兄だ。

そして2番目の兄貴がエルエス・アンバーエスト。

本来は兄のアルサンの補佐をするべき位置にいるのだが、村おこし前の衰退していた村では補佐をする必要もなく、食い扶持を稼ぐために村を出るとは言っていた。

男爵家ではあるが金がなかったからな。


しかしまさか傭兵になってるとは思わなかった。


「わかったありがとう。暇があれば探してみる事にするよ。それじゃ。」


俺たちはギバスさんたちと別れ、アキーエの実家の宿に向かった。




次の日の朝、カーロッタから出発する時にはアルサン兄、ギバスさん、ナーシャさんが見送りに来てくれた。

ナーシャさん‥

本当に受付業はいいんですかね?


「見送りありがとう。向こうでのゴタゴタが終わったら帰りにまた寄るから。アルサン兄それまでに俺の名前書いてある看板変えといてくれよ。」


「はは。わかったよ。ただ看板には闘技会優勝者アンバーエストと書かさせてもらうぞ。」


むう‥

今はマルコイの名前しか名乗っていないので家名だけなら我慢できないことはないか‥


「わかった。もしマルコイの名前が残ってたら、アルサン兄も落とし穴に嵌めるからな。」


「おいマルコイ。ワシを落とし穴に嵌めるのは確定みたいな言い方をするな。」


ふふふ。

残念ながらそれは確定事項なのだよ。


「それじゃまた。」


俺たちはロンギルに向かい旅を再開した。

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