第277話

「なんだよくそっ!何にひっかかったんだ?」


もちろん男は俺がやったなんて思いもしない。


男は派手に転んだ事を仲間たちに笑われている。


「マルコイ‥お前今何をした?」


流石にギバスさんはしっかりと見てたか。


「ちょっとした小技だよ。」


ギバスは怪訝な表情を見せる。


「ここで暴れるなよ。せっかく訓練場があるんだ。運動したいならそっちに移動しろよ。」


転んだ男の顔がみるみる真っ赤に染まる。


う〜ん。

別に煽ってるつもりはないんだが‥


「マルコイ。相手するの?どうせギバスさんにボコボコにされるんだからほっとけばいいのに。」


「せっかくだから俺がどれくらい強くなったかギバスさんに見せてやろうと思ってな。」


「そっか。マルコイにしては挑発的だから珍しいなと思ってたけど、そういうことね。」


「ああ。あの時訓練してくれたから今の俺があるしな。俺の成長を見てもらいたいってところかな。」


ギバスさんとナーシャさんには俺が何のスキルも持たない時にお世話になった。

冒険者になるときも本当に心配かけたと思う。

今はそのおかげでこれだけ強くなれたってのを少しは見せたい。


「ちっ!お前が言い出した事だからな。俺たち全員と闘ってもらうぞ。死んでも文句言うなよ。」


男たちはそう言って訓練場の方に向かって行った。


男たちの後について訓練場に行こうとすると受付から女性が駆け寄ってきた。


うん。

久しぶりにあったが相変わらず綺麗だな。

俺の冒険者ギルドの受付嬢の理想はスタート地点にあったんだ!


おう!

そんなに睨まないでくださいアキーエさん‥


「久しぶりナーシャさん。」


「マルコイ君大丈夫なの?君が闘技会で優勝したって聞いたけど、とても信じられなくて。スキルも持っていなかった君がそんなに強くなれるものなの?それに今だって彼ら6人もいたのよ。ギバスさんに任せて逃げた方がいいわ。」


「おいおいナーシャさん落ち着いて。俺が闘技会に優勝したのは本当だって。まあ運がよかったのもあったけど、それなりに強くなったんだぜ。」


「そうなんだろうけど‥」


「ナーシャ心配いらないぞ。マルコイが闘技会で優勝したのはまぐれじゃないみたいだ。あのくらいの奴らなら相手にならないと思うぞ。」


ギバスさんがナーシャさんに声をかける。

さすが元高ランク冒険者だ。

でもさっきの一瞬でそこまでわかるものか?


「でも‥」


「心配いらん。マルコイさっきの小技は相手の動き出しがわからんとできない事だな。だとしたら相手がいつ動くか重心の動きを見てそれがわかったって事だ。そいつは経験を積まないとスキルだけじゃ無理な代物だ。」


「‥‥わかりました。でもマルコイ君危なくなったらすぐに言ってね。ギバスさんに代わってもらうから!」


ナーシャさんには敵わないな。

ナーシャさんにとっては俺は今でも近所の悪ガキって感じなんだろうな。


俺はパーティのみんなとギバスさん、ナーシャさんと一緒に訓練場に行く。


受付はいいのかと尋ねたが、最近冒険者に登録する人が増えてきたのでもう1人雇ったそうで、その人がいるから大丈夫との事。


ナーシャさん受付業務ほったらかして来そうだったからよかった。


訓練場に着くと先程の冒険者たちがニヤニヤしながら待っていた。

手には自分たちの武器を持っている。


「それじゃあ順番に相手してもらおうか。言っておくが俺達は全員Cランク冒険者だ。お前が言ったんだからもちろん全員相手してもらうぞ。それと武器は自分たちのを使わせてもらうぜ。」


俺は何も言わずに訓練場にある木剣を手に取る。


「順番なんて面倒くさい事言わないで全員でかかってきていいぞ。もちろん魔法使いや弓士も一緒にな。」


「なっ!てめー‥死ぬまで痛めつけてやる。俺達に大口叩いた事後悔するんだな!」


6人は一斉に戦闘の準備に入る。


さてギバスさんに俺の成長した様子を見せてやるかね。

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