第276話

「そういえばミミウ精霊さんと話せるようになったんですよ!」


そうだな。

確かに【精霊重士】になってからミミウは精霊と会話する事ができるようになってたな。


「おおそうか!それはよかったな。お前を見つけた時の事を話す時に言ったが、お前を見つけた時はたくさんの精霊がお前の周りで踊っていたからな。俺が抱え上げるといなくなったし、それから見かける事もなかったのだが、お前はもう一度会って話したいと言ってたからな。」


「うん!でもまだはっきりと言葉がわかるわけじゃなくてなんとなく気持ちが伝わってくるくらいだから、もっとお話ししたいですぅ!」


なんだそれ?

ミミウは精霊と何か関係あるのかな?

ミミウが精霊とか?

でも今のミミウ見ててもせいぜい食べ物の精霊くらいにしか思えないな‥

食べ物の精霊とかいるのか?


まあもし関係あるならそのうちわかるだろ。

ミミウも自分の出生にそこまでこだわってるように見えないしな。

イルムさんの事を本当の父親のように思ってるし、実際血の繋がりなんて関係ない。

お互いがお互いの事を思ってるのがわかるしな。


それから少しイルムと話をした後に別れて目的の冒険者ギルドに向かった。


いろいろと寄り道してしまったけど、本来の目的地だ。


冒険者ギルドは変わらず、こぢんまりした建物だった。


中に入ろうとすると中で言い争うような声がしていた。


なんだろうと思いながらも中に入ってみると、数人の若者と初老の男性が言い争っているところだった。


老人と言っても筋骨隆々で頭の白髪と顔の皺がなければとても高齢とは思えない感じの男性だった。


それに対して若者は5‥6名か。

年齢は俺たちより少し上に見えるな。


「ナーシャが困っているだろう。ここら辺はモンスターも弱くそんな高額な依頼はない。王都の冒険者はそんな事もわからんのか?さっさと王都に戻って王都で依頼を受けたらいいじゃないか。」


「わかってんよそんな事。護衛依頼でここまで来たんだけど、依頼者がここに住むって言い出したんだ。だからせっかくだからここの金になる依頼を受けて帰る事にしようと思ってたのにつまらん依頼しか出しやがらねえ。だからこの辺のモンスター根絶やしにしてやるからCランク依頼相当の金を出せって言ってるだけだろうが!」


「この辺のモンスターを根絶やしにするだと?何日かかると思ってるんだ?どうせ1日数匹倒して根絶やしにしたとか言うつもりだろうが。悪いがこの村にも冒険者はいる。この辺のモンスター討伐は彼らにやってもらう。お前らのような常識もない冒険者など必要ない帰るがいい。」


「なんだとじじい!言わせておけば‥」


おいおい。

穏やかじゃないな。


「どうしたギバスさん。困り事か?」


初老の男性がこちらを向く。

すると初老の男は驚いた表情を見せて嬉しそうに話しかけてきた。


「なっ!マルコイか!どうしたはこっちのセリフだ。帰ってきたのか?」


「いや、ロンギルに行く途中で寄ったんだよ。久しぶりにギバスさんの顔も見たかったしな。」


「ははは!有名人にそんな事を言われるとは照れるじゃないか!」


「やめてくれ。そんなんじゃないよ。」


冒険者になるために稽古をつけてくれたギバスさんにそんな事を言われるとムズムズする。


「おいおい!何俺達を無視してのほほんと話ししてやがんだおい!」


うるさいな。

感動の再会に水を刺しやがって。


「別に無視してる訳じゃないさ。どっちかって言うとあんたたちの事を助けてやってんだぜ。あんたたちじゃ全員でかかっても、このおっさんは倒せないぞ。それにお前たちなら俺でも勝てるしな。」


「なんだとてめー!ふざけやかって!」


男は俺に掴みかかろうとしてきた。


このくらい初動がわかったり、動きのタイミングがわかると空間魔法で動きを阻害する事ができそうだな。


俺は男が動くために力を入れた右足を空間魔法で固定する。

ぐっ、このくらいの相手でも厳しいか。

質量を持った物が、動くのを固定させようとするとやっぱりかなりの魔力が持っていかれるな。

多分Sランクとかになるとまったく意味がなさそうだ。


しかしこの程度の相手なら一瞬でも問題ない。

男はいきなり踏み出した足が動かずに盛大に転げる事になった。


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