第256話

「それじゃそろそろイザベラさんが来そうだから一旦訓練を終わろうか。」


あれから追いかける人を変えたりして何度か訓練を行った。

キリーエは追いかける側になってもある程度は動く事ができた。

森のような障害物がある所に限定されはするだろうけど上手く動けていた。


相手の動きの先や周りの環境、状況を読む事に長けており、スピードで負けている部分をそれらで補っていた。

【感知】を使った上でおそらくいろいろな事を考えて行動しているのだろが、それについてはキリーエが元から持っているスキル【高速思考】が働いているのだろう。


家に戻るとバラックスさんとアレカンドロが模擬戦を行っていた。

だいぶ数が落ち着いてきたとはいえ、変わらず多数の模擬戦希望者も来ていた。


必然的にバラックスさんとアレカンドロでの模擬戦の時間が多くなったきているが、本人たちは満足しているので生暖かく見守っておこう。


俺が見たスキルについてはメモっており、そのメモに載っていないスキルを持っている希望者がいれば教えてもらうようにしている。


念のため対人戦の訓練の為とか、未体験のスキルとの戦い方の勉強だといっている。

もちろんスキルを模倣するための方便だが、2人はいたく関心していたので守ってくれる事だろう。


今日は1人模倣できそうなスキルがあったので模擬戦を行い家に戻る。


まだイザベラさんが来るまで時間があったのでシャワーを浴びて昼食の用意をする。

薄着だとイザベラさんが怖いので、普段着ではあるがしっかりと着込んで料理を行う。


最近はキリーエというかホット商会がしょうゆとみそを作ってくれたので料理のレパートリーもかなり増えた。


今日はうどんとおにぎりにする。

うどんの麺は手作りだが、昨日のうちに仕込んでいたのでパッと作れる。


コシが出るようにアレカンドロに踏み踏みしてもらったので完璧だ。


しょうゆベースでつゆを作り麺を入れる。

異世界では素うどんと呼ばれるものだな。

上からいろいろ乗せてもいいが、うどんは今回初挑戦なのでそのまま食べてもらう事にした。


よそってテーブルに並べる。

いつのまにか食事に参加するようになったバラックスさんとアレカンドロの分も用意するようにしている。


模擬戦の相手を手伝ってもらってるのだ、昼食くらいは出してやらないと。


まあバラックスさんもアレカンドロもうちで食べる昼食がなによりの報酬だと言ってくれているのでよしとする。


「うわ〜、マルコイさん今日のご飯は何ていう料理ですかぁ?」


「今日はうどんっていう料理だぞ。熱いから気をつけて食べるんだぞ。」


「はーい!」


ミミウがすごいスピードで食べだした。

みんなも思い思い食事を始める。


「麺もつゆもたくさん作ったから、おかわりも遠慮なく言ってくれ。」


そう言ってテーブルを見るとキリーエがいない。

さっきまでテーブルで食事をしようとしてたと思うんだけど‥?

ハッと台所を見るとキリーエが何かぶつぶつ言いながら麺とつゆを見ている。


「似たような料理はあるけど、しょうゆをベースしているのはないんと違うかな‥それに麺の嚙みごたえもええわ。これなら厨房に麺を作る人と‥‥」


うん。

いつものキリーエさんの調子に戻ったようだから何よりだ。


時折聞こえる「利益が!」とか「うひひひ」については聞かなかった事にしようと思う‥


昼ごはんも食べ終わりバラックスさんとアレカンドロさんが「腹ごなしだっ!」といいながら2人で模擬戦をやりに言った。

うん。元気でなりより。


片付けも終わりしばらくぼーっとしていると家のチャイムがなる。

アレカンドロがイザベラさんを連れてやってきた。

普段着なのだろうか、フリフリの服を着ている。

ピンクなので目が痛い。


アレカンドロの鎧は変形していない。

流石にフリフリの洋服を着ている奇抜な格好をしているおじさんには闘いを挑まなかったのかな?


あれ?

よく見ると脇腹あたりにかなり大きなへこみがあった。

やっぱり挑んでやられてたのね‥

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