第255話
イザベラさんは昼過ぎに来るそうなので、午前中はキリーエの訓練にあてる事にした。
身体の動かし方を覚えるためには身体を動かす事が1番なのでみんなで鬼ごっこをする事にする。
かくれんぼでも良かったが、俺が【察知】持ちでスキルをオフにする事ができなかったので単純に追いかける事にしたのだ。
しかしただ走ったとしても模倣スキルであるキリーエは捕まってしまう。
そこで街を出て森の中で行う事にした。
森の中であれば木が邪魔をするのでトップスピードは出ないが、キリーエはスキル【感知】を使う事で周りの状況が確認できるので有利に動く事ができるのではないかと思ったからだ。
「さーてそれじゃ訓練を始めよう!アキーエが他の3人を追いかける、そして捕まったら外で待機して全員捕まえたら終わりって感じで。」
「いいけど、なんでわたしが追いかける側なの?マルコイでもよくない?」
「いや、俺が追いかける側でもいいけど、俺が追いかけたら捕まえる時にあれやこれや‥」
「うん。わたしが追いかけるわ。」
アキーエに白い目で見られた‥
「それじゃあ3人が森に入って10秒したらアキーエも入ってくれ。」
キリーエの訓練だけど、俺たちも訓練が必要だからな。
俺とミミウ、キリーエが森の中に入る。
アキーエが数え出す。
とりあえず俺は木の上に登り、みんなが見える位置に移動する。
キリーエの動きを見ておきたいからな。
キリーエはアキーエが見える位置で様子を見ている。
ミミウは‥
あっ!
精霊使って穴掘ってやがる!
そして穴の中に隠れたぞ。
隠れてはいけないとは言ってないけど、思い切った戦法をとるな。
でも穴の中に入って丸まってるから、上から見たら丸見えだぞ‥
アキーエが10秒数え終わったので動き出した。
俺は木の上、ミミウは穴の中にいるから必然的に目に入るのはキリーエだ。
アキーエはキリーエを見つけると走り出す。
スキル【魔闘士】があるから流石に速い。
しかし森の中だから動きが阻害されて思うようにスピードが出せないでいるな。
それに対してキリーエは上手く木を使ってアキーエを巻いている。
捕まりそうになってもひらりと身を翻して躱している。
スキル【回避】が役にたっているのかな?
キリーエはアキーエの追撃を躱しながらミミウが隠れている穴の近くに移動している。
キリーエがミミウの穴を迂回して逃走している。
アキーエのスピードはキリーエより上だからショートカットして一気にキリーエに迫る!
あ‥
アキーエが穴に落ちた‥
キリーエはスキル【感知】を使ってミミウが隠れている穴に気づいていたな。
しかし勢いよく落ちたな。
完璧に逆さま向いてるぞ。
「あっはっは!」
いかんいかん。
あまりに素晴らしい格好で笑ってしまった。
アキーエは穴に落ちたが、中に隠れていたミミウを見つけて捕まえた。
そして穴から出ると‥
あ、やべ!
目があった。
思わず笑ってしまった事で気づかれてしまったらしい。
アキーエは俺が登っている木の下まで来ると、木に向かって拳を振るった。
メキメキと音を立てて木が倒れる。
おいおいおい!
俺の体重を支えてる木だからかなり太目の木なんだけど、一撃で折っちゃった。
このままでは俺も落ちてしまうので、木が倒れる前に地面に飛び降りて受け身をとる。
あっぶねー。
そして動き出そうとする俺の目の前にアキーエが陣取る。
やばい。
逃げると殺られる‥
俺は大人しく投降する事を選んだ‥
だって怖かったんだもん。
その後もキリーエはアキーエの猛追をよく躱していた。
身体操作が上手くなったお陰なのか、木に捕まり枝を使って一回転する事でアキーエの攻撃を躱す場面なども見られた。
地力の差で息が上がってしまい捕まったが、アキーエの攻撃をこれだけ躱せるのであれば問題ないだろう。
キリーエが1人の時に襲われない事が大前提だが、もしもの場面でもここまで動けるのであれば安心できそうだ。
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