第251話
「何故キリーエを狙う?」
「ふん。そんな事は依頼主に聞いてくれや。俺はキリーエって名前の商人を殺すために雇われただけだからよ。さ、それじゃ案内してくれ。」
そう言って男は暗がりから出てくる。
身長は俺より少し低いくらいだろうか。
黒装束に身を包んでいる。
依頼を受けた事など、ペラペラ喋ってるって事は俺のことも生かしておく気は無いようだな。
それならもう少し話を引き出せるか?
「どこからの依頼なんだ?」
「さてな。でも依頼主はそいつの事が邪魔みたいでよ。結構な金を俺達に積んでくれたぜ。」
「お前が依頼主から直接依頼された訳じゃないのか?」
「あ?そんなもんうちのギルドを通して‥なんでお前にそんな事まで言わなきゃいけないんだよ。さっさと連れて行け!」
なるほど。
こいつはどこかのギルドに所属している。
おそらく暗殺ギルドとかその辺だろうな。
そして俺たちって事は何人かいるって事か。
そして依頼主はキリーエを邪魔と思っている。
これは商会として目立ってきたからか?
それともキリーエの相続問題?
これは情報が少なすぎる‥
そして俺の事をよく知らないって事は遠方からだな。
他国のギルドを使ったってわけか。
出る杭を打ちに来たってところかな‥
そんな事させる訳ないだろう。
キリーエは俺の大事な仲間だ。
指一本触れさせはしない。
「おい。お前変な事考えてないよな?たかが冒険者風情が俺の邪魔をするなよ。」
「悪いが仲間を殺すと言われて、はいどうぞなんて言う奴がいると思うか?悪いがお前はここで捕まえさせてもらうぞ。」
「ふん。冒険者如きが。死ね!」
男は体勢を床スレスレまで低くしてこちらに迫ってくる。
確かに冒険者はモンスターの相手をするのが主流だ。
対人戦は数えるほどしかしてないのが普通だろう。
それに対して男は暗殺を生業としてきたはずだ。
対人戦には絶対の自信を持っているのだろう。
笑みを浮かべたままこちらに向かってくる。
俺は男の進行方向に剣を突き立てる。
すると男は多少驚いた様子だが剣を避けるように動き俺の横に回ろうとする。
俺はそれを見越して剣を支えにして身体を宙に浮かして体重を移動させて男の後ろに移動する。
男は突然目標がいなくなった事に焦り、そのまま転がるように前方に移動した。
男がこちらを向くと同時に俺はスキル【縮地】を使用する。
一瞬で男の目の前に移動して剣の柄を男の腹に打ち込む。
男は苦悶の表情を浮かべてそのまま地面に倒れ込んだ。
隣の部屋にいたアキーエが物音を聞いて出てくる。
「どうしたのマルコイ?なっ!誰その人!」
「不審者だな。アキーエ悪いが縛っておきたいからロープを持ってきてくれないか?」
「わかったわ。」
アキーエが持ってきたロープで男を縛る。
男は途中で起きたが何も言わずにこちらを見ている。
俺は男に問いかける。
「お前は国に突き出させてもらう。俺の仲間を狙うなんてこの場で後悔させてやりたいがな。その前にお前が持っている情報をしゃべってもらおうか?」
「ふん。そんな事話すわけがないだろう。それにお前にのせられて俺が知っている情報はほとんど喋ったはずだぜ。」
「お前はどこから来た?」
「はっは。そうだな。ギルドは金儲けと殺しをさせてくれるから雇われているだけで恩も義理もない。でもだからと言ってお前にしゃべる義理もないぞ。それに国に突き出されるのもごめん被りたい。悪いがここまでだ。」
男はそう言うと奥歯を噛むような仕草を見せる。
その後すぐに男の顔色が悪くなってくる。
毒でも飲んだのか?
「くっくっく。最後だからな。優しい俺はお前の問に答えてやる。俺の所属するギルドはロンギル共和国にある。しかし依頼は全ての国から受けている。だからヒントが欲しけりゃロンギル共和国に行くんだな。そうすりゃ答えがわかるかもな。」
「なんでそこまで教える。」
「は!教えたわけじゃない。ターゲットがロンギルに近づけば殺しやすくなるだろう。どっちを選ぶかはお前ら次第だな‥」
男はそこまで話すと事切れた。
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