第242話
俺は剣を鞘に収めてリュストゥングの側に立つ。
スキル【異世界の知識】で得た技を使用するために。
リュストゥングを倒すためにはエンチャント:雷を使用して多数の斬撃を放つよりも、一撃に重きを置いてリュストゥングのスキル【換装戦鎧】を超える力を放つべきだ。
俺は鞘に収めた剣に力を込める。
俺が使う技は異世界の勇者たちがいる世界で使われている技、『抜刀術』だ。
本来カタナと呼ばれる剣で使用する技だが俺のダマスカス剣なら再現できる。
剣が前に出る力を鞘で抑える。
そして鞘走りを利用して剣速を速める!
『抜刀術:雷虎』
そして放った剣撃は‥
リュストゥングの鎧を切り裂いていた‥
「かはっ!」
リュストゥングが吐血する。
動けなくなるほどの傷ではないにしろ決して軽い傷ではないはずだ。
「これは凄まじい威力だな‥残念だがこの傷を回復すれば俺の魔力はほぼ空になる。今回はマルコイ‥お前の勝ちだ。」
そう言ってリュストゥングは両手を上げる。
それを聞き俺もエンチャント:雷を解く。
正直ギリギリだ。
今のが通用しなかったら打つ手がなかったかもしれない。
「『解・鎧』」
リュストゥングが鎧を外す。
腹部からかなりの出血が見える。
俺はキリーエを見る。
「リュストゥングさん!どうするん?うちのポーション使うならどうぞ。」
「それを使ったら嫁に来てくれるか?」
「ん?無理。」
即答‥
そしてまたダメージ受けてるし。
なんで俺から受けたダメージより辛そうなんだよ‥
「『着・癒鎧』」
リュストゥングは別の鎧を着装した。
「ある程度の回復ができる鎧だ。時間はかかるがこれをつけていれば出血は止まるし傷も時間がかなり必要だが治癒できる。だから心配いらぬ。」
そう言ってリュストゥングは俺を見る。
「しかしこれですっきりした。やはりお前は強かった。これで闘技会が再開して不戦敗といった形ではなくきちんと負けた。快く旅に出れるというものだ。」
俺もSランクと闘えてよかった。
まだまだ俺は強くならないといけない。
今回はたまたま勝てたが、本当にギリギリだった。
もっともっと強くなろう。
リュストゥングは大陸の南端にある国に行くそうで、ここから2ヶ月ほどはかかるそうだ。
「まだ確認はされておらんが、魔王が動き出したら俺も呼ばれるだろう。その時にまた会おう。その時は勇者が中心なのか、お前が中心なのか楽しみにしているぞ。」
「俺が中心なんてまずないですよ。魔王と戦うのは勇者って決まってるんですから。」
変なことを言う人だな。
「わかっておる。しかし‥マルコイお前には何かを感じる。それにお前と共に戦えたら‥そう思える。だから何かあったら俺にも声をかけてくれ。力になろう。」
ありがたいな。
まあ何もないとは思うけど、何かあった時には声をかけさせてもらおう。
「それではな。俺は明日にでもこの国を出る。また会える日を楽しみにしているぞ。」
「そうですね。俺も楽しみにしています。」
「わたしも楽しみにしています。可愛い奥さん連れてきてくださいね。」
アキーエがすすっと出てきてリュストゥングに声をかける。
ほら、そんな事言うからリュストゥングさん帰るつもりだったのに座り込んで蟻を見てるぞ‥
「リュストゥングさんだったら今度は大丈夫ですよ。ただもう少し余裕を持ってくださいね。焦りすぎは禁物です。必ず奥さんみつかりますよ。」
アキーエが珍しくリュストゥングに優しい言葉をかけている。
早く嫁を見つけて欲しいんだな‥
「おお!そうかわかった。ならアキーエよ、俺の‥「お断りします。」」
懲りないおっさんだ‥
その翌日に本当にリュストゥングは旅に出た。
知人に力を貸すためにといいながら女性を紹介してもらうために‥
そしてその数日後に闘技会再開の知らせがきた。
どんだけタイミング悪いんだあの人‥
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