第241話
「ふん。何発か入ったと思ったが、ダメージは受けていないようだな。さすがと言ったところか‥お前は闘技会で見せた切り札が何枚か残っていたな。いつまで残しておけるかな。とりあえず先にこちらが切り札を切らしてもらうぞ。『解・鎧』」
リュストゥングは鎧を換装するようだ。
リュストゥングのスキルは、俺のエンチャントのように必要な時に必要な物を使用するタイプだ。
ならばリュストゥングの切り札とは膂力を上げる鎧なのか、それとも他の何かを上げる鎧か‥?
「魔力の消費は激しいからいつもはあまり使わないのだがな。『着・武王鎧』」
リュストゥングがスキルを使用して鎧を着装する。
黒を基調とした鎧だが、雰囲気が変わった。
威圧感が半端ない‥
「それでは行くぞ!」
リュストゥングがこちらに向かい駆け出す。
スピードは普通だが‥
突然リュストゥングのスピードが上がる!
鎧の脚、脹脛あたりから風が出ているのか?
俺は慌てて防御体制を取る。
リュストゥングは俺の目前に迫ると拳を振りかぶる。
すると今度はリュストゥングの肘のあたりから爆風が放たれる。
その勢いを使い猛烈な拳が飛んでくる。
これはやばい!
俺は直感で悟り、エンチャント:土塊とスキル【堅牢】を使用する。
リュストゥングの拳は【堅牢】を易々と破り、そのまま俺へと迫る。
拳を剣の腹で受け、その衝撃に耐えれるよう剣の裏に自分の腕を当てる。
しかしリュストゥングの拳は剣ごと俺の身体をぶっ飛ばした。
くそっ!
なんてパワーだ‥
地面を転がりながらすぐに体勢を整えるがもう目の前にリュストゥングが迫って来ている。
リュストゥングはそのまま勢いをつけて蹴り上げるように足技を放ってきた。
辛うじて防御はするが腹に丸太をぶち込まれたような衝撃だ!
一度宙に蹴り上げられた後に地面に叩きつけられてそのまま地面を転がる。
攻撃を受けてすぐにエンチャント:活水を使用して回復を図っているがダメージが大きくまともに息もできない‥
口の中に込み上げてきたものを吐き出す。
嘔吐物に血が混じっている。
防御してこれかよ。
強すぎる‥
エンチャント:活水により動ける程度には回復した。
しかしリュストゥングは間髪いれずにこちらに向かってきている。
くっ!
回復を重視すべき今の状況でエンチャント:活水を解くわけにはいかない。
『予測変換』を使用するにはまだリュストゥングの動きがそれほどわかっていない。
ましてや鎧によって能力が変わり、今回の鎧については初見だ。
『予測変換』がどれ程使えるかわからないが迷っている暇はない!
リュストゥングの攻撃が見える。
しかし十分な予測ができていないためか、わずか0.5秒程の先しか見えない!
見えてはいるが、身体がついてこない!
ギリギリで躱しているつもりだが血飛沫が舞っている。
皮一枚避けれていない‥
だが‥
躱せているっ!
『予測変換』の使い過ぎで頭痛もかなり酷い。
頭の中で大きな鐘をならされているようだ‥
リュストゥングの攻撃のタイミングを見計らいなんとか距離を取る。
よしっ!
腹のダメージもかなり回復した。
今度はこっちの番だっ!
エンチャント:火風水土を発現!
そしてすぐにエンチャント:氷を発現する。
俺とリュストゥングの間に大きな氷柱を発現させる。
リュストゥングは突然現れた氷柱に驚きはしたものの、すぐに氷柱を叩き壊す。
壊された氷柱から氷片が舞いリュストゥングに纏わりつく。
「むっ?」
一時的にリュストゥングの視界を塞ぎ、エンチャントを氷から雷に切り替える。
俺はエンチャント:雷のスピードでリュストゥングの側まで移動する。
ここで決めるっ!
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