第237話

「兄貴!兄貴の一番弟子は自分ですよね!」


「いや、自分はマルコイ殿の弟子になったつもりはない。マルコイ殿の強さを少しでも勉強できたらと思ってるだけだ。」


「それを弟子ってんだよ!だから兄弟子の俺も敬えって言ってんの。とりあえずいきなり喧嘩吹っかけて来てぶっ飛ばした件を謝れっつってんだよ!」


「まだマルコイ殿がお主の事を弟子とは言っておらん。だから不審者若しくは無駄に闘いを挑んできた輩と同じである。だから謝る必要はない!」


あの日からアレカンドロは本当に毎日通って来た。

迷惑かと思いきや、無駄に模擬戦を挑んでくる相手を蹴散らしてくれているので実は重宝している。


「マルコイ殿と闘いたければ自分を倒してからにするがいい!」


とか何とか言って露払いをしてくれている。

本人はこれもいい修行になるとの事なので、そのままにしている。

それに本当に戦いを挑んでくる人がたくさんいて、1日2〜3人は来るのである。


だからそのついでに俺が家を貰った事をどこかで聞いたノギスがヤッホーいと家に来たところ、アレカンドロにぶっ飛ばされたのはご愛嬌といったところではある。


「ノギス‥ちなみに俺はお前を弟子にしたつもりはないんだけど‥」


「兄貴ー!そりゃないっすよ〜!兄貴はいずれSランク‥いやSSランクにもなるはず!俺はその兄貴の一番弟子なんすから!」


「ほら、マルコイ殿もこう言ってある。だがまあマルコイ殿の知り合いだと言う事は認めよう。だから次回からはちゃんと通してやるからな。あとしっかりと食事は摂ったほうがいいぞ。お主は軽すぎる。」


「きぃーー!もう頭きた!表でろや!今なら『狂化』もフルで仕事するわ!」


「ふん!望むところだ。」


もう2人してうるさい‥


「わかったわかった。その辺にしとけって。アレカンドロも一応ノギスは俺を慕ってくれてるんだ。俺たちの事を思ってやってくれたんで嬉しいが、怪しいからってぶっ飛ばした事は謝ってくれないか。」


「むう。マルコイ殿がそう言うのであれば‥」


アレカンドロはノギスに向き直る。


「先程はすまなかった。」


「お、おう。わかってくれたらいいんだよ。」


ノギスもアレカンドロが素直に謝ってくれた事に、腹の虫はおさまったのか一応納得する。


「まあまあ2人とも。飲み物持って来たんで飲んで落ち着くといいよ。」


キリーエがタイミング良く飲み物を持って来てくれた。


「すまないなキリーエ。ありがとう。」


「ええよ。イライラしてる時は甘い物が1番!ホット商会の新商品を食べて落ち着くといいわ。」


ふむ。

新製品のお試しでしたか。


今回の新製品は米を練って丸くした物にトロミのついた茶色っぽいタレがかかっている。


「マルコイさんが以前煎餅と一緒に教えてくれた、団子ってやつを作ってみたんや。味はみたらし言うやつや。」


俺は一口食べてみる。

甘じょっぱい味がしてとても美味しい。

ただ惜しむべきは全てうるち米で作ってあることかな。

俺も知識としてしかわからないが、うるち米ともち米を使用した方が美味しいらしい。

しかしこれでも十分すぎるくらい美味しいので別に構わないも思える。


「なんだコレ!すっげー美味い!甘いんだかしょっぱいんだかわかんないけど、絶妙な味だ!これなら100個はいけるぜ!」


「これは美味い!本当に絶妙な味付けですな!」


ノギスもアレカンドロもさっきまで喧嘩していたのも忘れて夢中で食べている。


「マルコイさんに聞いたしょうゆを再現して使ってみたんや。どう?」


これは本当に美味しい。

しかしもうしょうゆを再現したのか。

すごいなぁキリーエは。


ノギスもバクバク食べてるし、アレカンドロも綺麗な顔にタレをべったりつけて美味しそうに食べている。


うん。

美味しいはやはり正義だな。




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