第230話

「い、いやガルヘアは魔道具を叩き割って力を取り戻したみたいな感じだったぞ。た、たぶんその魔道具は魔族の力を封じ込めるものだったんじゃないかな?魔力回路がなくなってたのは壊れた衝撃かなぁ〜‥」


「なんで焦ってるのよ?」


アキーエさんや。

今はそっとしておいてくれ‥


「そうなの。だとしたら半年‥いや一年は人族として過ごしていた訳なのね‥魔王のスキルでどの程度思考誘導されていて、どれほどの強制力があるのかわからないけど恐ろしい程の執念ね‥」


確かにそんなに長い間自分を偽るなんて考えただけで気が狂いそうだ。


「あとガルヘアが言ってたんだけど、ガルヘアは魔王とは別の何かに従ってるみたいだったぞ。」


俺は他に気になっていた点をイザベラに報告する。


「それはどう言う事?神聖国に勇者が現れた事で魔族の中に魔王のスキルを持つ者が現れたんじゃないかとは言われているけど、魔王を確認できたわけではないわ。だからガルヘアは魔王の尖兵だと思われているけどそうじゃないの?」


「ガルヘアの言い方だと、魔王は今頃勇者と戦ってるんじゃないかって。俺はあのお方に従ってこっちに来ているって言ってたぞ。それに魔王を敬ってる感じは受け取れなかったけどな。」


するとイザベラは眉間に皺を寄せる。

いや、厳ついから。

もう子供泣くよ。


「それは王様に報告が必要ね。ありがとうマルコイちゃん。」


それと先程の話の中で俺は気になった点があったので確認する。


「やっぱり魔王は勇者が現れたから‥なんだよな?」


「そうよ。まだ確認できてないけど、魔族の情報やモンスターの異常発生が確認されているから間違いないと思うわ。」


「それって勇者のスキルが先に発現したって事はないんだよな?」


「ん?どう言う事?」


俺は勇者たちの事を知っている。

何故この世界に来たのかも。


「勇者が先に発現して魔王がってのは考えられないのか?」


「魔王が確認されてないから正直何とも言えないけど、どっちが先だったとしても発現するべくして発現したと思うわ。どちらかが突然現れたのなら話は違うけど。おそらく魔王が現れたから神聖国で勇者のスキルを発現した人族が現れたんだと思うわ。」


なるほどな。

でもそれってこの世界での話だよなぁ。

もし無理矢理勇者を連れてきて、そのせいで魔王が現れたってんなら神聖国が悪玉じゃね?


行きたくないんだけどなぁ‥

どうしよ。

別に起こった事柄だからもうほっとくのが1番なのかなぁ‥

でもこの先も同じような事やってしまいそうなので止めた方がいいけど、その辺は王様に任せていいとしても、恵たちの事があるからなぁ‥


一度恵たち勇者御一行とも会う必要があるかもな。


「マルコイちゃんありがとう。此方でまとめて王様には報告しておくけど、確認のために一度ギルドに足を運んでね。」


「わかった。出来るだけイザベラさんがいない時に行くようにするよ。」


「んもぅ、マルコイちゃんったら。私に会うのがそんなに照れ臭いの?遠慮しなくていいのに。ギルドが嫌ならプライベートでもいいわよ。でもマルコイちゃんは若いからあんまり期待したらダメよ。」


うむ。

返しが怖い‥

無駄にダメージを受けてしまった。

イザベラさんおそるべし‥

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