第224話

「ぐっ!きさまっ!」


ガルヘアの顔が歪む。

高い防御力を誇る自身の身体を傷つけてられたのだ。

俺の力が本物だとわかったようだな。


ガルヘアはあきらかに狼狽している。

そりゃそうだろう。

コイツは1人でこっちに乗り込んで来て、しかもSランクを含む全員を相手するつもりだったのだ。

おそらく魔族でも上位の存在だろう。


コイツは自分を倒せるのは勇者くらいだと高を括っていたのではないだろうか?



残念だったな。

それに勝てるどうかはわからないにしろ、俺の仲間だったらお前と対等に戦えるくらいはするぞ。


「き、貴様!くそがっ!」


ガルヘアは俺に向かい拳を振り上げる。

混乱してて周りが見えないのか?


俺は後ろに下がりアキーエと場所を入れ替わる。

アキーエはガルヘアの拳を化勁で受け流しガルヘアの体勢を大きく崩す。

ガルヘアは何が起こってるからわからないまま地面に膝をつく。


そしてガルヘアの顔面に放射式の魔法拳が直撃する!


「ぐがっ」



うわぁ痛そう‥



膝をついたまま後ろに仰反るガルヘア。


俺は体勢を崩しているガルヘアに剣で追い討ちを仕掛ける。


ガルヘアは慌てて地面に尻餅をつき後ずさるように剣を避ける。


「き、きしゃまら!」


おっ?

アキーエの魔法拳でもそこそこダメージ喰らってるみたいだな。


俺が思っていたよりもずっとアキーエたちは強くなっている。


魔族の脅威に怯える必要はもうない。

自分たちなら戦える。



俺は上段に構えた剣先に光の粒子を集める。


「『光天撃』」


俺は光を発する剣をガルヘアに放った‥



俺の剣はガルヘアの心臓辺りまで入り、そのままガルヘアは地面に突っ伏した‥







ふぅ。

何とか勝てたか。

やはり魔族は一筋縄ではいかない。


【予測変換】の酷使で頭痛が酷い。

魔力もギリギリまで使ったから身体が重い。


しかし俺に呪縛のように絡みついていた魔族への恐怖が晴れたような気がする。


決して勝てない相手ではない。

俺じゃなくてもSランクやアキーエ、ミミウでも十分戦える。




「かはっ!はぁはぁ‥」


ガルヘアはまだ息があった。

しかし顔から生気がなくなっている。


「ま、まさかこんなところで俺様が死ぬとはな‥Sランクだけ殺して戻るつもりだったが思わぬ伏兵がいたもんだ。」


「残念だったな。お前が敬愛する魔王様もそのうち勇者様が倒してくれるぜ。」


俺がそう言うと、ガルヘアは俺を見て顔を歪めて笑う。

「ははっ!そうか!魔王も倒されるか!だが俺がここに来たのは魔王の命令ではない。魔王は勇者相手にあれやこれやと戦略を練ってる頃じゃないか?俺をここに送り込んだ方は‥」


ガルヘアは俺の顔を見る。


「いや、お前があの方まで届いては困る。そのまま何も知らずに恐怖しろ‥ひひ。」


すると突然ガルヘアは自分の右眼に指を突き刺し、真っ赤な眼を取り出した。


そして持っていた自分の眼球を握りつぶした‥

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