第215話

「それでは次の試合を始まる。ガルヘアとマルコイの両名は中へ。」


俺は場内に進み出る。


反対側からはガルヘアがこちらに向かって歩いて来ている。


中央で止まりガルヘアを待つ。


相変わらずガルヘアは俺を睨みつけている。

お前は表情一個しかないんかい。


「両者準備はいいか?それでは闘技会準決勝第二試合を始める‥」


開始の合図が出る前にガルヘアは猛然と此方に駆けて来た。


「なっ!始めっ!」


おいおい。

俺は聞きたい事があるって言ったんだが?


軽装で武器を持たない無手のまま突っ込んでくるガルヘア。


俺の元に向かって来たガルヘアは俺の顔目掛けて拳を繰り出した。


俺は首を傾けて拳を躱す。

そこからガルヘアの攻撃は変化して今度は肘で俺の顔を狙ってくる。


俺はエンチャント:土塊を使い片手でガルヘアの肘を受け止める。

ガルヘアは自分の力に自信があったのか、攻撃を受け止められた事に驚きの表情をしている。


「俺は聞きたい事があると言ったはずだが?」


「オーガキングを倒したのはまぐれじゃなかったわけだな。聞きたい事だと?俺に答える義理はない。」


俺は掴んでいる肘を離して押し返し無理矢理距離を取らせる。


「まあそう言うなよ。聞いてくれるだけでいい。」


ガルヘアは構えたままこちらを見ている。

とりあえず突っ込んでくる様子はないので話を聞く気になったのか。


「お前オーガ討伐の時にあの場にいたよな?そして俺を見ていたな。なぜだ?お前に恨まれる覚えは確かにある。ミミウとの一件があるからな。しかしなぜ‥」


「なぜお前はオーガと戦わずに俺を見ていた?いや、オーガに襲われずに俺を見ていたが正しいのか?」


するとガルヘアは俺を見る目が更に鋭くなった。


「バレてないと思ったのか?確かにそれとなく戦っているふりをしていたようだったがな。だがオーガはお前相手には向かって来てなかったぞ。」


「お前が俺を見てたように俺もお前を見てたって事だ。まあお前の視線を感じてから気づいたからお前のおかげみたいなもんだがな。」


ガルヘアは口を開かず沈黙している。






「お前は魔族と繋がってんのか?」





俺はガルヘアの顔を見ながらそう尋ねる。

少しでも動揺しているようなら当たりだろう。

しかしガルヘアは顔を下に向けたため、表情がわからくなった。


「そう考えるといろいろと繋がってくる。普段群れをなさないオーガがなぜSランク冒険者がいない時にこの街を襲ったのか。ミミウを危険人物として殺そうとしたのか。魔族が、魔王が闘技会の闘いでまだ強くなりそうな冒険者を排除するだめだったのだろう?」



「そしてお前が言う分け与える能力を持っているヤツがお前と繋がっている魔族なんだろう?」


俺は下を向いたままのガルヘアに問う。


相変わらず顔を下に向けているため表情はわからないが肩が震えているように見える。


「これが俺がお前に聞きたかったことだ。」

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