第169話

俺はミミウをアキーエに預けて剣に手をかける。


もし向かってくるようなら全力で相手する。

一撃で命を奪う覚悟を決めて、剣を持つ手に力を込める。


しばらく睨み合いが続く。


「待て待て!先程確認したが、ミミウ氏は意識を失っていた。戦闘行為は不可能だったため勝者はガルヘア氏になる。それにこれ以上続けるようであれば、ガルヘア氏が失格になるぞ。」


運営側の人が慌てて止めに入る。

それを聞いてガルヘアは舌打ちしながら戻っていった。


「危ないやつね。本当に向かってきそうだったわ。」


確かにかなりのダメージを負っていたのに構わずに俺に向かってこようとしていた。

止めるのがもう少し遅かったら襲ってきていただろう。

まぁその時こっちも斬り捨てるつもりだったがな。


場内ではガルヘアが勝ち名乗りを受けている。

そしてガルヘアは俺を睨みつけながら場外へ出て行った。


俺たちはミミウを救護場まで連れて行きミミウが起きるまで救護場に待機していた。

そして30分ほどたった頃、ものすごい大きなお腹の音がなったと思ったらミミウの意識が戻った。


「うぅ‥」


ミミウは気がつくと上半身を起こし周りを見渡した。


「負けちゃったですか‥」


「ああ。でもよく頑張ったな。」


俺はミミウの頭を撫でながらそう言った。


「全力は出したから後悔してないですぅ。」


「でも‥」


「勝ちたかった‥」


そう言ってミミウは俺のお腹に頭をつけて涙を流した‥





しばらくたって落ち着いたのか、ミミウは顔を上げた。

目はまだ赤いけど、とてもいい笑顔をしている。


「お腹空いたですぅ!」


「そうだな。ご飯でも食べにいくか!」


「任せて!ちゃんとミミウちゃんならそう言うと思ってたから場所は用意しとるよ。」


キリーエが親指を立てながらそんな事を言う。


「やったですぅ!」 


元気になったみたいだな。

でも本当によく頑張った。

今日は満足するまで飲み食いすればいい。

それこそ今日の悔しい思いを笑って話せるくらいに。





ミミウは闘っている最中にすでにお腹が減っていたそうで、いつも以上に食べまくってた。

お腹減ってなかったら勝ってたんじゃないか?


そして用意していた分の食材がなくなって、キリーエがあたふたしていた。

わはははは。




宿に戻り明日に備えて休む事にした。

少し気が昂っていて寝れなかったので宿の外に出て夜風にあたる。


明日はSランクとの闘いだ。

昨日までは負けたくないって思っていたが、今日一日で気持ちが変わった。


負けられない。


ガルヘアにはきちんとお返ししないとな。

勝ち上がってガルヘアと闘うかどうかわからない。

でも多分‥

いやきっとガルヘアとは闘う事になるだろう。


その時にミミウのお返しをしないとな。


リュストゥングにももちろんお返ししたいと思うが、ガルヘアは別だ。


闘いが終わった後にやろうとした事は許せる事じゃない。


俺の仲間を傷つけようとした事を絶対に後悔させてやる。



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