第165話

開始の合図があったが、2人とも動かずに様子見している。

相変わらずガルヘアはニヤニヤした不気味な笑顔を顔に貼り付けている。


ミミウは基本的に後の先だから待っているのだが、ガルヘアはただ面白がっているように見える。


ミミウが使い慣れたタワーシールドを前に構えたまま、ジリジリとガルヘアに向かい進み出した。


そしてガルヘアの素手では届かないミミウの間合いに入るとミミウが先制する。


とりあえず様子見だろう。

胸を狙ってショートスピアで突きを放つ。


ガルヘアはそれを横に身体を捻る事で躱す。

そしてそのままの体勢でミミウに拳を放つ。

通常であればあんな体勢で放った拳にはそれほど威力はないように思えるが、ミミウの盾は大きな音を上げる。


あんな体勢であそこまで強い攻撃を放てるのか?

上半身の筋力だけで放っているような攻撃だが、あの攻撃にあれだけ威力があるのであれば思っていた以上に強敵だな。


攻撃を受けたミミウのタワーシールドの足元に黒い砂のような物が舞いながら落ちている。


あれは砂鉄か。

ミミウは着実に闘いを有利に運ぶ準備をしているな。


ミミウは休みの日にコツコツと砂鉄を集めていた。

今ではかなりの量になっている。

そして今日はそれを惜しげもなく使用するようだ。

地面に落ちている量がヤクトルの時に比べてかなり多い。


攻撃を盾で受けたミミウは足を払う為にショートスピアを横なぎに振るう。

半歩下がったガルヘアはスピアを避けた後に反撃に転じる。


ミミウの槍士としての実力は模倣スキルのため、レベル1だ。

Aランク冒険者の攻撃を捌いていたガルヘアには通じないだろう。

基本トドメをさす為に使用していたスキルだ。

ミミウもそれでガルヘアと渡り合おうとは思っていないはず。

ガルヘアに反撃させて隙を作るためか、次の行動に移りやすい程度の攻撃を放っている。


反撃に転じたガルヘアの攻撃を盾で防ぐ。

その度にミミウの盾の周りには黒い砂鉄が舞う。

しかしかなりの量だな。

どんな利用方法をするのかは俺もわからないが、初戦で使用していた闘い方で使う量ではないな。


ガルヘアは防御に特化しているミミウに対して痺れを切らしたのか、攻撃に転じた。


攻撃の為に足に力を入れて移動しようとする時にミミウが動いた。

正確には砂鉄を動かしたになるのだが、ガルヘアが足に力を入れた瞬間に地面に撒いている砂鉄を自分の方に引き寄せた。

離れて注視している俺はわかるが、その場にいるガルヘアには何が起こっているのかわからないだろう。


力を入れた瞬間に足場が動いた事でガルヘアが体勢を崩す。


そこにミミウがショートスピアで突きを放つ。

これは躱す事は難しいと思ったが、ガルヘアは自分に向かってきた槍の側面を拳で叩きその軌道を逸らした。


かなりの威力だったのか、今度はミミウの体勢が崩れる。

その隙をガルヘアが見逃すはずはなく、すぐに攻撃に移る。


ガルヘアの拳がミミウを襲う。

ミミウにガルヘアの拳があたると思った瞬間、ガルヘアの前に黒い壁がいきなりミミウの盾から生えるように出現し攻撃を防いだ!

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