第152話

ガルヘアは暴力に酔っているようだ。

自分の力を振るうことに快楽を覚えているのだろう。


自分の力に酔い、それを振るう為だけにこの闘いに参加したとしか思えない‥


その力をモンスターにだけ振るっていれば問題ないどころか高名な冒険者になっただろうが、それでは満足できなかったのだろう‥



しかしそれ以外に気になる事があった。


ロッフトの矢が折れた事だ。

明らかに頭に刺さったと思ったのだが‥


何らかのスキルなのだろうか?


どちらにしろアキーエやミミウにはあたって欲しくない相手だな。


二回戦がどうなるかわからないけど、下準備していた魔道具の確認をもう一度しておこう。


後味の悪い結果となったが、闘技会本戦の第一戦目の終了となった。


次の二回戦は5日後に対戦相手の発表で、その後は1日1試合のペースで行っていくそうだ。



とりあえずアイツとあたった時の準備をしたら、あとはリラックスして闘いを待つとしよう。

せっかくの闘技会に参加したのだから楽しまないとな。

それにアイツはSランクの変態か、かっこいい鎧の人とあたって勝手に負けるだろうと信じたい。






「みんなかっこよかったで〜!」


観客席からキリーエが降りてきて、俺たちを出迎えてくれた。


「アキーエちゃんは傷は大丈夫なん?」


「大丈夫よ。止血してたし、初戦が終わったからマルコイが回復してくれるから。」


「そうなん。でもめっちゃ血が出てたから心配したんよ。」


「ありがと。相手が強かったからこのくらいはね。でも勝てたからよかったわ。」


「ほんとやね。でもミミウちゃんもマルコイさんも勝ててよかったわ。3人とも強いってわかってたけど、見てるだけだと心配で心配で。そやから今日は慰労を兼ねてたっぷりとご飯とお酒用意したから、存分に飲み食いしていいからね!」


「おおーーっ!ですぅ!」


キリーエはこうやって気をつかって色んな準備をしてくれる。

本当にありがたいな。


キリーエが準備している店に行こうとすると、向こうから走り寄ってくる人がいた。


「おーい!マルコイ!飲みに行くぞーー!」


うわっ、バラックスさんだ‥

なるべく近づかないようにって思ってたのに、もう元気になったのか‥

よく見るとお腹に包帯のような物を巻いている。

あの人絶対抜け出してきてるよ。




どうしようか迷っていると、走り寄ってくるバラックスさんの横にスッと影が近づいてきた。


すると突然バラックスさんが糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


そして倒れたバラックスさんの後ろからシクーさんが出てきた。


こちらを見て軽く会釈をした後、シクーさんはバラックスさんの足を掴んで引きずって行ってしまった。


やっぱりバラックスさん、まだ完治していないのに黙って抜け出してきたんだろうな。


しかしシクーさん‥

手慣れている感じがするな‥


あ、でっかい石にバラックスさんの頭が当たった。

あれって血が出てないか?

  



う〜ん、見なかった事にしよう‥


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る