第151話
全く違う方向に射られた矢が突然生き物のように軌道を変えてガルヘアに襲いかかった。
だがガルヘアは特に表情も変えずに襲いかかってきた矢を躱した。
あんなものを初見で軽く躱せるのか!
しかしロッフトは躱される事も前提としていたのだろう。
躱したガルヘアに素早く次の矢を射っていた!
これは流石に躱す事が出来ずに矢がガルヘアの顔に突き刺さった!?
そう思ったが、ガルヘアはなんと‥
鏃を口で噛んで止めていた‥
あれ無理だろ?
人型の種族であの勢いがついた矢を咬合力で止めるなんて生き物として構造上無理じゃないか?
普通だったら貫通してるぞ。
それに相手を殺す勢いで矢を射ったロッフトもヤバすぎる。
矢が途中から曲がるなんてどうなってるんだ?
矢羽根を細工したらそんな飛び方をするのだろうか?
だとしてもかなりの修練をしなければ狙ったところに行く筈がない。
「ちっ、そんな方法で躱すなんてな。お前見た目は人族だか、本当に人族なのか?中身はドラゴンとかモンスターじゃないだろうな?」
「ふん。今のはなかなかよかったぞ。それではそろそろ俺の番だな。」
ガルヘアはそう言って悠然とロッフトに向かい進み出した。
ロッフトは弓を構えて距離をとる。
しかし会場の端まで行くと覚悟を決めたのか矢筒から矢を取り出して勢いよく矢を数本放つ。
全ての矢がガルヘアがいる方とは別の方向に飛んでいく。
しかしその全てが途中で軌道を変えてガルヘアに向かっていく。
そしてロッフトは矢を放つと同時にガルヘアに向かい走り出した。
避けられない距離から矢を放つつもりなのだろう。
自分に向かってきた矢を悉く躱すガルヘア。
そして近距離からロッフトが放った矢に軽く手を添えて軌道を変える。
必中の矢を後ろに逸らされたロッフトは打つ手がなくなったと思ったが、その手には何故か矢が握られている。
もしかして地面に刺さっていた矢を掴んだのか?
そして握られた矢は無防備なガルヘアの側頭部に吸い込まれる。
木が折れる音がした。
ロッフトが持っている矢が曲がっている。
折れているようだ。
なぜた?
頭に矢を刺すやつもぶっ飛んでるが、それでも矢は確実に刺さったはずだ。
頭に刺さる前にガルヘアが矢を拳で折ったのだろうか?
しかし俺の目には確かにガルヘアの頭に矢が当たったように見えたし、もし俺の目にも見えないようなスピードで矢を折ったのであれば、ガルヘアのスピードはバラックスさんやロメントの速さを上回ることになる。
ロッフトは驚愕の表情で自分の手元の矢を見ている。
「そ、そんな!確かに俺の矢は‥ぐはっ!」
ロッフトの言葉は最後まで発する事は出来なかった。
ガルヘアの拳がロッフトの腹部に打ち込まれた。
ロッフトは片膝をつく。
おそらく戦意喪失したのだろう。
ロッフトが片手を上げて負けを宣言しようとする。
しかしガルヘアはそんなロッフトに対して拳を打ち込む。
大会関係者が間に入るまで何度も何度も拳を振るった。
そして数人がかりで止められた後には恍惚の表情を浮かべているガルヘアと血溜まりの中で動かなくなっているロッフトがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます