第143話

さっきのアキーエの動き‥

あらかじめ動く方向がわかってたような動きだったな。

もしかして訓練の成果かな?

スキル【気功士】を模倣してから、スキル【気功士】とスキル【格闘士】、そして魔力を合わせる事を目的としてずっとアキーエは特訓してきた。


俺が知っているのは宿屋の庭で木を爆発させてたくらいなんだが、それ以降もずっとその力の可能性を模索していた。


正直スキル【気功士】とスキル【格闘士】を同時に発現している人なんて天文学的な確率だ。

だからその力の可能性を探るにしても手探りだったはずだ。


しかしアキーエの事だ。

努力家で負けず嫌いな彼女は俺が見たよりも、もっともっと先のステージに進んでいるだろう。


だからかな。

傷を負ったし、心配だけど彼女が負けるような気がしない。



‥‥‥!


それにアキーエのお腹の傷、血が止まってないか?






マガーレットは手元に戻している剣をアキーエに向かい振るった。

猛スピードでアキーエに向かって剣が襲いかかる。

しかしアキーエはマガーレットが剣を振るう前にすでに動き出している。


マガーレットは攻撃のタイミングに気づかれたため動揺したが、すぐに剣を手元に引き寄せる。


剣が伸びた状態から、刃先の長い長剣に戻る。

懐に迫ろうとするアキーエを袈裟斬りする。

タイミング的にマガーレットが剣を手元に戻し斬りかかる方が早い。


突進してきたアキーエに向かい剣を振るう。

アキーエの肩に剣が当たると思われた。

しかしアキーエは剣身を右のガントレットを使い、そっと流れるように軌道を逸らす。


剣を躱された事に驚きはしたものの、すぐにマガーレットは自分の距離を保つために後方へ移動する。


それを追いかけるようにアキーエも移動する。


そしてスネークソードを振るだけの距離が稼げたマガーレットはアキーエに向かって剣を振るった。


しかしマガーレットの剣は伸びない。

驚愕の表情のマガーレット。


剣を宙に振るったその隙に対してアキーエが懐に潜り込む。


マガーレットは広がらない剣を振り回してアキーエとの距離を稼ごうとするが、アキーエが間合いを詰める方が早い。

そしてアキーエの左のガントレットがマガーレットの腹部に突き刺さる。


そして‥


腹部に拳の着弾と同時に爆発音が木霊する。


腹部に打撃とその後の爆発をもろに受けたマガーレットはそのまま両膝を地面につき、前に倒れるように沈んだ。




「そこまで!勝者アキーエ!」


会場にアキーエの勝利のアナウンスが響きわたった。


「ふぅ‥‥スッキリしたっ!」






アキーエは着ているワンピースを翻しながらこちらに戻ってきた。


「お疲れ様。傷はどうだ?回復魔法をかけるか?」


「ありがとう。でも見た目ほど傷は酷くないから、後でゆっくりとお願いするわ。」


「わかった。一回戦が終わって宿に戻ったら魔法をかけよう。」


「ありがとう。」


「さっきの剣が広がらなかったのは何かしたのか?」


するとアキーエはふっと笑い


「少しね。あの剣を覆っている魔力の制御を乱してやったのよ。」

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