第135話

つい最近どこかで聞いたことがあるような‥


「それ以来彼女には会っていないよ。彼女が俺ではなく冒険者の彼を選んでからね。それ以来彼女には会っていないが、風の噂ではやりたかった服屋を開いたらしい‥」



ん?

兎族?

服屋さん?

でも彼女って‥?



「あの‥その兎族の人ってモラさんって人じゃないですか?」


「なっ!マルコイは彼女を知っているのか?」


「はい。先日服を彼女?のお店に服を買いに行ったばかりです。」


「そうか‥彼女は元気だったか?相変わらず綺麗だったか?もう何年も前の話だが当時の彼女は、それは可憐な女性だったからな‥」


「えっと‥元気は元気でした。それともしかしたらなんですけど、彼女?が選んだ同じ兎族の男性ってお兄さんだと思いますよ。」


「何!し、しかし一度見かけた事があったが、明らかに骨格から違ったぞ。兄妹のはずが‥」


「いえ、お店に行った時に直接聞きましたから。俺もあの2人が兄弟ってのは信じられませんでしたけどね。」


「そ、そうなのか‥俺は勘違いで何年も‥ありがとうマルコイ。今度勇気を出して彼女のお店に顔を出してみるよ。本当にありがとう‥」


何か本気で感謝されている‥

モラさんが男だって言える雰囲気ではない。


「ありがとうありがとう。」


少し涙ぐんでいるガッハルトさんを見ると絶対に言えない。

俺が彼の想いを壊すわけにはいかない!

だから言わない!


あ、あとはモラさんが上手にやるだろ‥






「マルコイよ。」


ガッハルトさんの事を観察していると、王様が声をかけてきた。


「此度の模擬戦見事であった。後日この件の報酬については宰相のエッケンから渡す事にする。」


報酬?

模擬戦しただけで、報酬まで貰えるの?


「ありがとうございます。しかし模擬戦を行っただけで報酬までいただいて宜しかったのでしょうか?」


「構わぬ。それに充分過ぎるほど楽しませてもらったからな。くれぐれも報酬は断らず受け取るように。」


何か嫌な予感がする‥


「善処いたします。」


「ふむ。今日はご苦労であった。闘技会楽しみにしておるぞ。」


「はい。ありがとうございます。」


すると王様がすすっと近くに寄ってきた。


「キリーエだったな。お主も近く寄れ。」


俺とキリーエが近くに寄る。


「実はワシな、ホット商会の食い物も好きでな。今度新商品とか出すときは呼んでくれな。特に甘い物大歓迎だ。」


王様がニンマリと笑う。


「それとマルコイ。闘技会の本戦だが、AランクはもちろんSランクもおそらく参加する。Sランクは人外のやつばかりだからお主でも勝てないかもしれん。しかしまだまだ隠し玉を持ってそうなお主だ。今日よりもっと面白い物を見せてくれるだろう。」


王は空に向かい咆哮を上げた。


「マルコイよ。もっともっと強くなれ。ワシと肩を並べるほどな。期待しておるぞ!」


「はっ!冒険者マルコイとして国王陛下の期待に応えるとお約束しましょう!」


王様の期待か‥

少し重いような気がするけど、俺はやれる事をやるだけだ。

本戦当日までやれる事はやっておこう。

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