第134話

「エッケン。マルコイの強さどう思う?」


国王はエッケンに問いかける。


「まだ実力は隠しているようですが、騎士団長には届かないとしても副団長クラスはあるかと思われますな。」


「やはりそうよな。俺も闘いたくてうずうずするわ。しかし商会の会長として呼びはしたが、思わぬ掘り出し物よな。」


「しかしあの者、冒険者の矜持を持っております。この国に長く居付く者ではないと思われますが‥」


「そうだな。しかしあの若さで、あの強さとあれ程の剣を作る事ができる男だ。人族ではあれ、この国の王になれるほどの器を持っていよう。」


「確かに。いずれ冒険者として高みに上がった時にこの国に戻ってくるといいですが。」


「そうなるように、この国にいるメリットを国にいる間に作ればよかろう。そうだ!武器の購入金額を倍にすればいいのではないか?」


エッケンはため息をつきながら王に意見する。


「そんな事したら数年で国の金庫が空になってしまいます。それよりもこの地に住まうよう家などを提供した方がいいのでは?」


「なるほど!ならばどこかの貴族の家を徴収して住まわせればよかろう?」


「そんな事したら住んでる貴族に恨まれます‥何かいい条件の家を私の方で手配しておきます。」


「さすがロレッタスの宰相様だな!頼りになるわい。」


その日の何度目かのため息をつくエッケンの肩を、国王はバシバシと叩いていた。






なんか王様と宰相さんが楽しそうに話してるな。

悪い予感がビシバシとするのだが‥



しかしとりあえず模擬戦も問題なく終わったようだ。


「ほらな。やっぱりマルコイさんが勝ったやん。心配する必要ないっちゅう話やん。」


キリーエがニコニコと笑いながらやってきた。

それでも心配はしてたみたいだったけどな。

俺が勝った時にホッとした表情を見せていた。


「期待に添えたか?」


「うん。マルコイさんかっこよかったよ。」


はは。面と向かって言われると照れるな。

キリーエは商人として活動しているがパーティの金銭管理もお願いしている。

自分達も冒険者活動でお金を稼ぎはしているが、大量の魔道具や誰かさんの尋常ではない食費なんかはキリーエが出してくれている。


ミミウがクシャミしてるかな‥


俺が案を出してくれるからと言ってはくれるが、実際それをお金に変えているのはキリーエだ。

今回の件で少しでもキリーエの役に立てたのなら俺は満足だ。




「マルコイだったよな。」


ガッハルトさんが此方に歩み寄り声をかけてきた。


「はいガッハルトさん。冒険者マルコイです。」


「はは。そうだな、冒険者マルコイ殿。今日はありがとう。俺もいい経験になったよ。」


「いえ。こちらこそありがとうございました。ところでガッハルトさん。さっき言ってた冒険者に対してプライベートで思うところっていうのは?」


するとガッハルトは少し寂しそうな表情を浮かべる。


「ああ、その件か‥実はな。おれが好きだった女性が冒険者だったんだ。お店を開くために冒険者をやると言い出して。俺が騎士団に入りお金を稼ぐから、そのお金で店を開いたらいいって何度も言ったが聞かずにね。それで彼女は同じ兎族の男性と冒険者を始めてしまってな。彼女は俺ではなく冒険者を選んだんだよ‥」




ん?

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