第126話

「これなんかどうかしら?」


モラさんはこちらを見ながら華やいだ笑顔して、重低音な声で聞いてくる‥


むぅ‥

可愛い‥


「こっちのはどう?」


こちらも花の咲いた様な笑顔でアキーエが聞いてくる。


ふむ。

可愛い。


さっきから俺は着せ替え人形のごとく色んな服を着せられている。


その度にキャッキャとはしゃぎながら会話している。


それを見ながらわかった事が1つある。


可愛いは正しいという事だ。


だってしょうがない。

視覚に入ってくるモラさんの情報は可愛いのだから。

まぁイザベラさんの時の様にテンションだだ下がりにならなかったからあまり深く考えない事にしよう。


「じゃあこれとこれをお願いします。あとこれから

着る機会も多くなると思うからオーダーメイドの服もお願いしてもいいですか?」


「いいわよ〜。さっき触らせてもらったから採寸は必要ないわよ。デザインはどうするの?」


モラさん、手をワキワキするのはやめて下さい。


「デザインは公的な場に出ても問題ない様な服であればモラさんに任せるわ。」


「わかったわ。任せて!腕によりをかけて作るわね。」


着る機会ないと思うんだけどな〜‥


「そういえばマルコイ。モラさんってイザベラさんと昔冒険者してたらしいわよ。」


「え?そうなの?」


とても冒険者をやっていた様には見えない。

それに服を作るくらいだから、スキルも装飾系のスキルじゃないのか?


「もう!昔の話よ。まだ冒険者のギルドカードは持ってるけど、私ってダブルスキルだったの。スキルが【剣士】と【裁縫士】だったから、お店の支度金を冒険者で稼いだのよ。」


イザベラさんは冒険者が似合いすぎるけどモラさんは想像がつかないな。


「でもほらっ。実は素材が必要な時とか、お金が足りない時とかはまた冒険者やろうって思ってこうやって身につけてるの。」


そう言いながら胸元からギルドカードを出す。

男の人なのに仕草がいちいちドキドキするな‥


モラ

冒険者ランクA

スキル【剣鬼Lv.8】【裁縫士Lv.7】


すごっ!

冒険者ランクAだった。


「凄いですね。冒険者ランクAだったんだ。」


「兄はもっと凄かったわよ。兄はスキル【格闘聖】を持ってる冒険者ランクSだったのよ。ドラゴンも単独で倒した事もあるぐらいだから。」


イザベラさん凄過ぎっす。


変な事言わなくてよかった。


「兄は私に付き合ってくれただけなんだけど、冒険者が性に合ってたんでしょうね。好きな人もいたみたいだけど、結局冒険者に関わる仕事がしたいってこの街でギルドマスター兼受付で何年も働いてるわ。」


しかもイザベラさんギルドマスターだった!


全然気づかなかったよ‥


「もう!その話はおしまい。それじゃマルコイさんのオーダーメイド承ったわ。私の【裁縫士】のスキルにかけて格好いい服を作ってあげるわね。」


(ピコーンッ)


『模倣スキルを発現しました。スキル【裁縫士】を模倣しました』


あ、全くそのつもりなかったけどスキル模倣できた。

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