第93話

ナーシスと会ってから少し時間は経ってしまったが、久しぶりにアリアのお店に行く事にした。


「アリアいるか〜?ナーシスから呼んでるって聞いたから寄ったぞ?」


俺が声をかけると店の奥からアリアが出て来た。


「おーマルコイさん。お久しぶり。」


「おう。ナーシスに聞いたけど何か用事があるんだって?」


「そうそう。前にマルコイさん紹介するって言ってた【魔道具士】の事なんだけど、今度こっちに来るそうだよ。」


アリアは椅子に座りながらそう言った。


「突然だな?でも何か用事があってくるんじゃないのか?その時に紹介してもらっていいものなのか?」


こっちには錬金術ギルドがないので、何かなければ来る必要もないと思うのだが‥


「マルコイさんも出るって言ってた闘技会を見に来るんだって。いつもこの時期に観光する予定にしてるけど、忙しいみたいでなかなか来れなかったんだ。でも今年は都合がついたから来るみたい。」


成る程、闘技会自体かなりメジャーな大会のようだったからな。

そりゃ見学に来る人もいるって事か。

俺は知らなかったけど‥


「それじゃその時に紹介してもらえるって事か?」


「そうだね。それにもうそろそろ着くと思うよ。手紙もらったのもずいぶん前だし、少し前に来て私の家に滞在したいって言ってたから。」


それは助かるな。

セイウットに行くのはしばらく先になる予定だったからな。


「それはありがたい。それと‥」


俺は店の中を眺めながら気になっていた事を尋ねる。


「しばらく来ない間に店の中がずいぶんとすっきりしたな。」


以前来た時は物が結構ごちゃごちゃしており、何が置いてあるのか分かり辛かったが今は用途毎に商品が陳列されており一目で何が置いてあるのかわかるようになっている。

その中で見覚えのある商品があった。

しかし名前が変わっている。


「この小ポーション(体力)ってのは‥」


「そ。前は体力劣化ポーションで売ってたやつ。」


商品名は小ポーション(体力)効果:体力ポーションを薄めた物で、擦り傷や切り傷に使用できる。深い傷には中ポーション以上の使用が必要。


わかりやすい。

これって‥


「これキリーエが?」


「そう。キリーエちゃんが来て考えてくれたの。」


商品の陳列から内容まで全てやったくれたのか。なんか色々と有能だなキリーエは。


「色々アドバイスもらって店の内装まで変更してくれて。それにお代もいらないって。マルコイさんの紹介だからって言ってた。」


「そうか。それはよかったな。」


しかしキリーエの無料か‥

少し怖いな。


「キリーエさんがマルコイさんの事だからこの仕事も儲けに繋がるはずや〜!って言ってたよ。」


すいませんキリーエさん。

今回のは儲けに繋がりませんよ!

無料のキリーエより怖い物はない‥


俺がキリーエさんの恐怖に慄いていると、お店の入り口に人が来たようだった。

女性のようだったがお客さんかと思いアリアに声をかけようとすると、その女性が先にアリアに声をかける。


「アリアー!着いたよー!」

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