第92話

「うわ〜!これシュワシュワしてて、口の中がパチパチしますぅ!」


ミミウが目をパチパチさせながら美味しそうに飲んでいる。


「これがセイウットで言っていた炭酸水ってやつだ。こっちで見つかったらいいなと思っていたけど特殊な材料だったからな本当にあるとは思わなかったよ。」


「マルコイさん。これって原価はどれくらいになるん?」


「ん?原価か‥重曹は使い道が沢山あるんだが、まだ用途が確立していないから凄く安かったぞ。しかしクエン酸の方は市場の店で売っていたけど作り方は秘密って言ってたしな‥そっちが結構値が張るかもな。」


クエン酸については菌を使って発酵するようだが正確な作り方はわからない。流石にそこまでは、あやめ達も調べてなかったようだしな。


「でも量はそんなに使用しないから原価的には問題ないんじゃないかな?それに重曹の方がベーキングソーダだったり、洗剤だったりと使い勝手がいいからそっちを商品化して、ついでに炭酸水とかでいいんじゃないかな?」


「ダメですぅ!炭酸水は正義ですぅ!」


おおう!

ミミウさん、随分と炭酸水がお気に召したようで‥


「そやな。その重曹ってのは大量に買って商品化して、クエン酸も契約して定期的におろしてもらうようにするわ。そしたら炭酸水も販売できるやんか。」


ミミウが首がもげるんじゃないかってくらい縦に振っている。


「そしたら商品名は『炭酸水ミミウ』で決まりやな。」


キリーエのネーミングセンスが壊滅的なんだが‥

それともまた看板作って売り込むつもりなのかな‥?


「商品に名前入ったら、またたくさん飲めるですか?」


「もちろん!任せとき。ミミウちゃん用にたくさん用意しとくで。」


う〜む、こうやって丸め込まれてるのか‥

いやミミウの場合は望んで丸め込まれている気がする。

それじゃ部屋に戻るとするか‥と思ったらしっかりとキリーエに肩を掴まれた。


「マルコイさん。重曹の作り方とお店の場所を教えてくれる?あとクエン酸も。」


そのままズルズルと引きずられて市場にもう一度行く事になった。

あれ?

ミミウに美味しいのもをあげるのが目的だった気がするんだけど、いつのまにかホット商会の新商品開発みたいになってないか?


キリーエはさっそく市場でクエン酸を売ってたおっちゃんと定期的な購入契約を結んでいた。

売れ行きはぼちぼちだったようで定期購入に喜んでいた。

その後に鉱石のお店に向かったが、鉱石屋の店主はキリーエを見るなり涙目になっていた‥


店主はほとんど売れないトロナ鉱石が売れる事に喜んでいたが、まとめて買うからとかなり値段を交渉され、結局最終的には涙目になっていた‥


ホット商会がロッタスを席巻するのもそう遠くないのかも知れないな。


「ほらマルコイさん!次は重曹の作り方を教えてくれんと。早く宿に戻って‥その前に商会の人間呼んで工程を覚えさせて、その作業の分野も作らんといけんよね。あ〜忙しい!」


口では忙しいと言いながらキリーエはすごく楽しそうに見えた。

引きずられながら俺はそう思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る